
最近、雑誌で「スペインバル案内」などという特集を目にすることが多い。どうやら東京あたりでは、おいしいタパス(小皿料理)とワインを出す「スペインバル」なるものが流行しているようである。ブームとまではいかないにしても、フランスワインやイタリア料理の次はスペイン、とばかりに人気を博しているらしい。
では本場スペインのバルはどうかというと…雑誌に紹介されているようなおしゃれなバルを期待して行くと、ちょっとがっかりしてしまうかもしれない。スペインのバルは基本的に、近所の人々が集う、喫茶店兼飲み屋のような場所。サラリーマンが出勤前に軽い朝食を取ったり、おばちゃんが市場で買い物をしたあとにおやつを食べたり、昼間から暇そうなおじさんたちがビールやワインを飲みながらサッカー談義に花を咲かせていたり。いわば地域密着型の社交場なのだ。
こうしたバルを仕切っているのは、この道ウン十年といった風情のいかにも頑固そうなおやじ。客も腹のでっぷりと出たおじさんたちが多いことから、密かに「おやじバル」と呼ばれている。カウンターに並んでいるタパスも、オムレツ、ポテトサラダ、イワシの酢漬けなど、シンプルな料理ばかり。もちろんワインは、1杯1ユーロ(約150円)程度の安物だ。
またスペインのバルは、一般的にあまりきれいとはいえない。というのも、客が食べ残したオリーブの種、口や手を拭いた紙ナプキン、タバコの吸い殻などを床にポイと捨てるから。初めてスペインを旅行した20年ほど前、「床にゴミが多いバルほど流行っている証拠」とスペイン人に教えられたものだ。
とはいえ、最近ではマドリッドやバルセロナなどの大都市を中心に、おしゃれで洗練されたバルも増えてきている。こうした店では日本でも流行しているピンチョス(爪楊枝や串で刺した一口サイズのつまみ)や創作タパス、こだわりのワインを出し、若者やちょっとハイソな人々でにぎわっているようだ。
これも時代の流れなのだろうか。スペインを訪れるたび、以前は「おやじバル」だった店がモダンなバルに改装されているのを見るにつけ、ちょっぴり寂しい気分になるのである。
(更新日:2006年07月24日)
Passion from around the World
マドリードから、気になる都市情報をお伝えします。
編集協力:三菱商事
※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。