
ヒートアイランド現象――。オフィスビルから出る排熱やアスファルト道路に吸収・蓄積される熱の増大などによってもたらされる現象だが、エアコンを使うことを抑制するよりも、緑化したほうが都会の温暖化に効果があることは、案外、知られていないようだ。大都会・東京でもさまざまな取り組みが数年前から行われているが、ビルの緑化にも目を向けてほしいものだ。
時をさかのぼること12年前。そのころ、建築界では屋上緑化が注目を集め始めていたが、賛否両論の的になっていたのが、地元では「天神岳」とも呼ばれている、アクロス福岡だった。
アクロス福岡は、福岡市天神にある旧県庁跡地利用として事業コンペよって生まれた官民複合施設である。
豊かな響きのシンフォニーホール、6カ国語同時通訳設備を誇る国際会議場、人と情報がクロスする文化情報ラウンジなど最新の設備が投入された公共施設とともに、流行の先端をゆくショップや個性豊かなレストランをはじめ、その充実ぶりは話題を呼び、今なお天神のランドマークに変わりない。地下2階から12階まで吹きぬけるアトリウムは圧巻。建築にさして興味がない人も見上げて一瞬言葉を失う。
ともすれば、こうした建築の美しさやアクロス福岡で催されるイベントの数々に心を奪われるが、それはアクロス福岡のビジネス街としての「都市の顔」に見ほれるようなものだ。いま見るべきは、南面の天神公園から続く「天神岳」の顔である。
アクロス福岡は、時代に早すぎたランドスケープだった。完成した当初は、当然のことながら植栽は幼く、弱々しかった。「コンクリートが目立ち建築が強すぎる」と批判され、「失敗作だ」と陰口をたたかれてきた。
今は70種類以上の植栽が段々に緑濃く繁る岩山である。ランドスケープデザイナーが思い描いたように、天神公園から「天神岳」が屹立(きつりつ)している。
できれば1階から登ってほしい。急ぐことはない、じぶんのペースで。簡素だがベンチや休憩スペースも設けてある。老夫婦が休んでは登り、話しては登っている。犬と散歩のおばさんはダイエットなのか。昼休みは低い階でOLが楽しそうにランチしている。夕暮れは顔寄せ合って話し込むカップルがいる。
一番高いフロアに着く。左手(北)に那珂川、正面(東)の天神公園から、はるか彼方まで広がる眺望。訪れたのは桜も満開のころ。風もそよそよ塩梅よく、天神公園の緑、那珂川の青、舞い漂う桜花。一幅の絵画を見るようで呆然(ぼうぜん)と見とれた。唯一残念だったのはビールを持参しなかったことだ。
この屋上庭園(ステップガーデン)の温度を夏期に調査したところ、コンクリート部分と植栽部分では20度以上の温度差があり、地上面の気温を比較すると南側が一番低いとの結果が出たそうだ。「天神岳」は見た目だけではなかった。こんな山岳、東京にこそ欲しい。
(更新日:2006年08月28日)
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編集協力:三菱商事
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