インドシナ半島に細長く横たわる国、ベトナム。千年の歴史を持つ古都、ハノイは今もなお一国の首都として君臨している。ハノイ最大の魅力は、何といってもしっとりとした趣をもつ情緒ある街並みだ。ノン笠に天びん棒を担いだ商人たちが行き交う旧市街では、何代も受け継がれてきた家業を営む人々や家々が今も昔と変わらぬ姿を残している。


産業の発展という意味では、1975年のベトナム戦争終結以来、南部最大のホーチミン市が首都ハノイを大きくリードし続けてきた。高々とそびえ立つビルの合間を、流行の服を身にまとった人々が最新のバイクで走り抜けていく。人と物にあふれかえったホーチミンのまちを訪れる人は、誰もが「活力に満ちたまち」と形容する。ベトナム随一の産業都市は首都ハノイではなく、ホーチミンなのである。
2006年に入り、そのハノイのまちが急激に変化を見せ始めた。外資系企業に対する会社法改正、世界貿易機関(WTO)への加入、ハノイでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の開催。これらが大きく影響し、日本企業も「第二次ベトナムブーム」とばかりに次々と進出をはかっている。以前からひそかに進められていたまちの拡大化はいよいよ形になって現れてきた。水田が広がり、ポツポツと民家がまばらに点在していたのどかな郊外には、高層マンションが立ち並び、地下道路が建設され、国際会議場まで造られている。郊外の建設ラッシュはさらに続く模様で、数年後には現在の中心部より栄えるのではないかとさえささやかれている。ハノイのまちは静かに、しかしながら着実に変わろうとしている。
外国の物や新しい物に対するハノイの人々の態度は、ホーチミンの人々の態度に比べて、ずいぶんと消極的である。とりわけ、食に関してはかなり保守的だ。欧米諸国ではすっかり定着した感のある「スシ」にも、おっかなびっくり、ひと口食べて「もういらない」といった具合である。興味はあってもすぐには飛びついたりはしない。「石橋をたたいて渡る」彼らの性格が垣間見れる瞬間である。
しかし、ここ数年の台湾が発祥の「バブルティー」の流行に始まり、アメリカンスタイルの喫茶店、中東料理の「ドネルケバブ」の屋台など、外国スタイルのファストフード感覚のカフェやスタンドが次々とハノイにも上陸し、人気を集めている。特に串刺しの焼き肉であるドネルケバブは、ひとつ1万ドン前後、日本円にして70円くらいというリーズナブルさもうけて、まちのあちらこちらでドネルケバブの屋台がたっている。ただ、このドネルケバブ。おもしろいのが、焼いた肉をはさむのがピタパンではなく、ベトナム風のフランスパンだという。なるほど、コーヒーやフランスパンといったフランス文化の置き土産を自国のスタイルに変化させ、ベトナムの文化として発展させてきた彼ららしい発想だ。まちが、人々の暮らしが変化するハノイの「ベトナムらしさ」はまだまだ健在のようである。
(更新日:2007年02月21日)
編集協力:三菱商事

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