
「おっしょいおっしょい!!」
山笠の勇壮な姿が目前を走り抜ける。博多祇園山笠がそのフィナーレである「追い山」を終えると、博多は夏を迎える。
そんな一日、博多のキャナルシティ博多を訪れた。ここは古いものを残す気風が強い博多で、異彩を放つ近代的な複合商業施設。ショッピングからアミューズメント、ホテルまでそろい一日中過ごしても飽きない場所だ。
CANAL(運河)の名のとおり、建物をぬうようにゆったりと運河が流れている。ほとりには数名の似顔絵師が軒を連ね、どこも人だかりができる盛況ぶり。中でもひときわ大きな集団の輪をのぞいてみると、中心には決まってSAYOさんの姿がある。

似顔絵師のSAYOさんこと宮崎さよ子さんは、10年この場所で似顔絵を描き続けている。他の似顔絵師たちはプロダクションに属しているが、SAYOさんはフリーランスで活動している。描いた数はカップルあり夫婦あり親子あり、総数7万人という。ひとつの市の人口をゆうに描いている計算だ。
人だかりの視線は、絵の具だらけのSAYOさんの指先を追う。

「あんた○○に似とうね〜」
「もっとダンナさんに優しくしてやらにゃ〜」
SAYOさんの筆、辛口トークも止まらない。お客さん大爆笑、我先にと行列に並ぶ見物人たち。10分程で出来上がる似顔絵は自然笑顔になっている。
ベイサイド、ももちの福岡タワーと観光地を渡り歩き、女手ひとつで3人の子供達を育ててきたSAYOさん。最初は人前で絵を描くのがとても恥ずかしかったという。
「ビールでも引っかけてから描きんしゃい」
先輩からはそんな変な極意も習った。

人の勧めで始めた仕事だが、3枚4枚と描いていくうちに、お客さんが喜んでくれる快感にいつしかやめられなくなった。辛口トークは、SAYOさんによれば「常に仮面を被っている」現代人の生の表情をとらえるための独特のテクニックという。時には得意な幕末維新の歴史の話も交えて言葉と気持ちを投げかける。お客さんは、そのストレートさにびっくりしたり、笑ったりして素の表情に戻るというわけだ。
好きな絵の道を糧(かて)とし、人と交わり、そして笑顔を忘れない。SAYOさんを慕って、また会いたいと語る客さんも多い。そこに博多の肝っ玉母さんの典型を見る思いがした。
(更新日:2006年08月28日)
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編集協力:三菱商事
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