
「ニューデリー」とは、英国統治時代の1911年、デリー(現在のオールドデリー)の南側に役所街と住宅地を作ったときに生まれた地域。
伝統的なバザールや遺跡はオールドデリーに集まり、ニューデリーには、政治家、役人、地方出身の実業家など地縁がない人々が多く暮らしている。
富裕層の暮らしを支えるために、周辺都市からは、靴直しや床屋といった職人たちが出稼ぎに来ている。インド人の多くは街頭床屋を利用するため、床屋の需要は多く、人手不足になるほどだ。

特に出稼ぎが多いのは、インドのなかでも極貧地域といわれるビハール州。ニューデリーの南、日本人会事務所にもすぐ近い公園の塀ぎわで街頭床屋業を営んでいるシャンブーさん(27)もそのひとりである。
ビハール州の北、ミティーラ画(民族画)で有名なマドュバニ地方から13年前にやってきた。父親と一緒に、友人を頼って14歳で上京。最初のころはからかわれもしたが、周りの人の引き立てもあり、一貫して今の場所で朝6時30分から夜の8時まで毎日休まず営業を続けている。

商売道具は、ハサミ2丁と使い捨てのかみそり。バリカンなどは使わない。
街頭ひげそりは10ルピー、ヘアーカットは15ルピー。誰かの家に呼ばれて行く出張サービスでは、ひげと髪とマッサージで100ルピー(およそ250円)。月収は5千〜6千ルピー、月によっては1万ルピーになることもある。
この中から、家賃1200ルピーを払い、毎月1千〜2千ルピーを実家に仕送りする。
文科系大学を卒業したインド人の初任給が1万ルピー程度なことを考えると、生活は割合豊かである。
昼は弁当を食べ、夜はできるだけ自炊。酒もタバコもやらない。楽しみは、毎日無事に仕事をすることと、仕事の後の友達とおしゃべりだという。

夢は、今は離れて実家で暮らす妻のミーナさんをニューデリーに呼んで、店舗を構えることだという。4年前に結婚したばかりだ。
収入を伸ばすために、お屋敷回りの出張サービスを中心に展開することも考えている。街頭だと、1日20人のひげを剃っても200ルピーにしかならないからだ。
高額なバリカンを使わずに、ハサミだけで仕上げていく技術はなかなかだ。マッサージも上手で、常連が多いのも納得である。最近、シャンブーさんが立つ公園の塀に棚が作られ、きれいな緑に塗られた。13年間、毎日休まずに働いている公園の「顔」へ、近くの工事業者からのプレゼントだ。
*1ルピー=約2.5円(2006/08現在)
(更新日:2006年09月11日)
Passion from around the World
ニューデリーから、元気になる都会での過ごし方をお伝えします。
編集協力:三菱商事
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