「美しい街・暮らしてみたい街ランキング」。各国のメディアで人気のこういった企画で、気候がよく風光明媚(めいび)なオーストラリアの都市はひんぱんに名前が挙がる。南部のメルボルンもその常連で、英国の経済誌「ザ・エコノミスト」2002年版では住みやすい都市世界ランキングの一位に選ばれた。石造りの古い建物と高層ビルが立ち並ぶ街はエレガントで、四季折々の花や緑の豊かさから「ガーデン・シティ」という愛称で呼ばれている。
いっぽう、旅行作家の兼高かおる氏が「世界で最も美しい街、住んでみたい街」とたたえたのがインド洋に面した西オーストラリアのパースだ。端正な街並みもさることながら、その魅力は温暖な気候と豊かな自然。街を縦断する高速道路にさえ、「カンガルー飛び出し注意」の道路標識が見られるような、のどかな街である。

年間17万人が訪れるという郊外のカバーシャム野生公園は自然を体感できる場所のひとつで、200種以上の動物たちと触れ合うことができる。もちろんコアラもいるが、オーストラリア観光の代表的な呼び物「コアラの抱っこ写真」はここでは行われてない。園長のデビッド・ソーンさん(58)は言う。
「コアラは神経質で、あまりいじられると、すぐに弱ってしまうのです」

開園当時からコアラの抱っこに反対し、観光ブームの間もその姿勢を変えなかった。代わりに彼が考えたのは、「ウォンバットの抱っこ」。
「こいつらだって、オーストラリア特有の有袋類だよ」
ウォンバットのお腹をさすりながら笑う。ウォンバットは丈夫で、人間に抱かれてもそれほどストレスを感じないそうだ。
イギリスの農家に生まれたソーンさんは、幼少のころ両親とともにオーストラリアに移住、酪農の仕事を手伝いながら育った。成長するにつれ「家族も同然」な動物への興味は深まり、独学で野生動物について学んだ。野生動物公園を立ち上げたのは20年前で、当初は、迷子のカンガルーを保護し、一般公開する程度のものだったという。
知識も重要だが、動物を知るには体験がいちばん。特に子供たちには、動物を身近に感じてほしいと彼は考え、動物に配慮しながら触れ合い体験ができるように工夫をこらしている。たとえばカンガルーのさくの中へは自由に出入りできるし、コアラは背中をなでることはできる。
「動物は人間のすばらしいパートナーです。うまく共存しなくてはならない。人間が住みよい環境を作ろうとすれば、動物にとって住みにくい環境になってしまう。そうならないために必要なのは、まず、動物に対する愛情ではないですか?」
彼は、最後に問いかけた。
(更新日:2007年03月13日)
編集協力:三菱商事

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