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ニッポン彩発見 広重 五十三次をゆく

歴史の移ろいに想いを馳せる東海道の旅 第二部 品川 東京都品川区 −五十三次 最初の宿場−

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脇道になって残った江戸の風情と海辺の記憶

つり舟や屋形舟の発着場となっている品川浦舟溜(だま)りは、漁師町としての品川を思い起こさせる一帯。背後には高層ビルが立ち並び、なかなかシュールなコントラストを醸し出している。

さて、このように江戸庶民の近場のリゾートとして賑わった品川宿も、明治以降はまったく異なる表情を見せることになる。

鉄道の登場によってほどなく宿場はなくなり、低地は大小の工場が立ち並ぶ工業地帯(のちの京浜工業地帯に発展)へ、台地は住宅地へと変貌した。同時に大規模な埋め立てが進み、漁師たちは昭和37(1962)年に漁業権を全面放棄。南品川猟師町(品川浦)と大井村御林漁師町(御林浦)のふたつの漁師町を形成し、江戸城に鮮魚を納める役を担う「御菜肴八カ浦(おんさいさかなはちかうら)」のひとつだった品川の漁業は、ここに終わりを告げる。現在、「旧東海道入り口」の看板が立つ八ツ山橋の上には京浜急行、下にはJRの各路線がひっきりなしに走り、広重が描いた風景を想像することは難しい。おちおち別れを惜しんでもいられない。

ただし、そんな八ツ山橋から旧東海道に足を踏み入れると、ほんの少しだけ江戸時代の旅人になった気分も味わえるはずだ。

というのは、第一京浜(国道15号)から旧東海道がはずれたことで、現在は商店街となっているこの道は、結果的に広重の時代とそれほど変わらない姿で残されることになったのである。道幅は江戸時代のまま。これが立会川に架かる浜川橋、そして刑場跡の鈴ケ森まで約3.7キロ続く。これだけの長さが当時の道幅で残っているのは、いまの東海道でここだけではないか。もちろん道は舗装され、古い建物もほとんど残ってはいないが、かつての雰囲気が偲(しの)ばれる名前のついた横丁や神社仏閣などはいまだ数多く点在する。自動車の出入りもそれほどなく、並行して走る第一京浜の喧騒が嘘のようにひっそりとした佇(たたず)まいを見せているのである。

また、海からは遠くなってしまったとはいえ、海辺の匂いもまだまだ随所に感じられる。旧東海道から海側に向かう路地は緩やかに傾斜していて、かつてはここが海だったことをうかがわせるし、建物のあいだから見える、たくさんの釣り舟や屋形舟が舫(もや)ってある品川浦舟溜りは、かつての漁師町としての面影を残している。その近くの利田(かがた)神社には、11代将軍家斉の時代に暴風雨で品川沖に迷い込んだ鯨の骨を埋めたという鯨塚が、当時の騒動を伝える瓦版の写しとともに残っていた。

徒歩でゆく江戸時代の旅を少しだけ追体験してみたいのなら、この品川宿、意外にいいかもしれない。

かつての北品川宿は、現在は北品川商店街を形成。道沿いには「旧東海道品川宿周辺まちづくり協議会」による「お休み処」が数カ所設置され(写真右手)、品川宿に関する情報を得られる。
旧東海道から海側に向かって緩やかに傾斜していく路地には、昔ながらの雰囲気を残すところも少なくない。写真は北品川2丁目あたり。
利田神社に残っている鯨塚。これは寛政10(1798)年に暴風雨で品川沖に迷い込んだ鯨の骨を埋めたもの。「享保のゾウ」「文政のラクダ」とともに江戸を騒がせた三大動物のひとつに数えられている。洲崎弁天とも呼ばれていたこの利田神社は、かつては海に突き出した砂洲に建てられていた。

東海道名物紀行 〜寄り道グルメガイド

三浦屋の「さかな丼」

1100円(税込)

東京湾でとれた新鮮な穴子、めごち、きすをふんだんに使った天ぷら丼。さっぱりとした食感のコロモは、舟の上でとれたての魚をタネに揚げる漁師の流儀だとか。それもそのはずご主人は、昭和30年代まで東京湾で漁師をしていた生粋の品川っ子。同店では今でも江戸前の素材にこだわったメニューが並ぶ。他にえび、穴子、きす、めごちをあしらった「極上丼」[1300円(税込)]、芝えび、紋甲いか、小柱を使った「かきあげ丼」[1100円(税込)]、「あさりの煮付」[400円(税込)]なども好評。

住所:東京都品川区北品川1-28-11

電話:03-3471-4811

営業時間:11:30〜14:00、17:00〜20:00

定休日:毎週水曜日(日曜、祝日通常営業)

文:藤田 健児
写真:熊切 大輔
(更新日:2006年07月13日)

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