沖縄の長寿を支える伝統の食生活。その特徴のひとつが、クーブ(昆布)、スヌイ(モズク)、モーイ(イバラノリ)、アーサ(アオサ)などの海藻類を多く食べることです。
海に囲まれた沖縄ですから、海藻が豊富なのは当たり前と思われるでしょうが、この中で、昆布だけは沖縄ではとれません。それなのになぜ沖縄では昆布をよく食べるようになったのでしょうか。
琉球王朝時代、昆布は中国貿易の重要な交易品でした。北海道でとれた昆布は、北前船で大阪を経由して沖縄まで運ばれ、そこから中国へと輸出されました。
沖縄までの航海の途中、波や雨に打たれて輸出できなくなったものもあったことでしょう。食べ物を決して粗末にしない沖縄の人は、そうした昆布を捨てずに、再び干して使っていました。こうして、昆布を食べる習慣が定着したのです。
本土では、昆布はだしを取るのが一般的で、料理といっても佃煮ぐらいですが、沖縄では、野菜のように昆布そのものを食べます。そのため、やわらかい長昆布(早煮昆布)が好まれ、これを水でもどしてから結び昆布やせん切りにして、汁物や煮物に入れたり、「クーブイリチー」という炒め煮にしたりします。
昆布には食物繊維やカルシウム、鉄分、ヨードなどのミネラルが豊富で、大腸がんを予防したり、余分な塩分やコレステロールを排出したりする働きがあるといわれています。
20年ほど前までは、沖縄が昆布の消費量日本一だったのですが、最近は、特に都市部で、若い人が伝統料理を食べなくなっているため、消費量が減少しており、日本一の座も他県に譲ってしまいました。いつかまた、沖縄が、「昆布の消費量も長寿も日本一!」といえる日がくることを願います。

ポピュラーな沖縄の常備菜、「クーブイリチー」。沖縄のことばで、クーブは昆布、イリチーは炒め煮のこと。刻み昆布や切り昆布をいったん油で炒めてから、砂糖、酒、みりん、しょうゆで煮込んで作る。具は豚バラ肉やしいたけ、こんにゃく、かまぼこなど。豚バラ肉は塊をいったんゆでこぼし、ゆで汁も煮汁として無駄なく使用する。
写真:嘉納 辰彦
(更新日:2006年08月03日)

岸 朝子(きし・あさこ)
大正12年東京生まれ。 女子栄養学園(現・女子栄養大学)卒。32歳で料理記者としてスタートし、「栄養と料理」編集長を経て、料理専門の編集企画会社「エディターズ」設立。93年より「料理の鉄人」(CX系)の審査員を務め、その批評振りと同時に、誉め言葉「おいしゅうございます」が評判に。
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