耕地が少なく、台風の通り道でもある沖縄は、米の生産量が少ないため、長い間さつま芋(ンム)が庶民の主食でした。
17世紀初頭に中国から伝わってきたさつま芋は、大地にしっかりと根を張って育つので台風に強く、救荒作物として、沖縄の人々を飢饉(ききん)から救ってくれたありがたい食材なのです。さつま芋の栽培がはじまると、沖縄では人口が一気に増加。また、残った芋はもちろん、つるや葉などまで豚のエサにもなったため、豚の飼育も容易になりました。
さつま芋は、白米とエネルギーはほぼ同じ。たんぱく質は2分の1ほどですが、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富です。豚肉や魚などのたんぱく源と一緒に食べれば、栄養学的にもバランスのとれた食事になります。
本土で一般的な、中が黄色のさつま芋だけでなく、紫の紅芋もよく食べます。沖縄風のてんぷら「アンダギー」にしたり、アイスクリームやケーキ、タルトといったデザートにもしたりしています。生の紅芋は沖縄県外に持ち出すことはできないのですが、蒸熱処理したものであれば取り寄せることも可能です。
里芋の一種で、粘りの強い田芋(ターンム)も沖縄自慢の芋。湿地帯や水田で栽培されるため、「田芋」または「水芋」と呼ばれています。親芋の回りに子芋がつく姿から、子孫繁栄につながる縁起物とされ、正月やお盆、出産祝いの料理には欠かせない食材です。
田芋料理の代表は「ドゥルワカシー」。田芋とずいきを豚だしで煮込み、芋がやわらかくなったらつぶして、きんとん状に。具には細切りにしたかまぼこやしいたけ、豚肉などを混ぜます。

田芋は水田で栽培される。私たちが主に食べるのは、写真では根のようにも見える茶色の部分で、根ではなく肥大した茎だ。ずいきとは、葉と茎をつないでいる緑色の部分、葉柄(ようへい)を指す。田芋はドゥルワカシーのほか、素揚げにしたり、しょうゆと黒糖で甘辛く煮付けたりしてもおいしい。
写真:嘉納 辰彦
(更新日:2006年09月21日)

岸 朝子(きし・あさこ)
大正12年東京生まれ。 女子栄養学園(現・女子栄養大学)卒。32歳で料理記者としてスタートし、「栄養と料理」編集長を経て、料理専門の編集企画会社「エディターズ」設立。93年より「料理の鉄人」(CX系)の審査員を務め、その批評振りと同時に、誉め言葉「おいしゅうございます」が評判に。
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