沖縄伝統食の特長のひとつに、良質なたんぱく質の摂取量が多いことが挙げられます。その代表的な食材が、豚肉。沖縄料理といえば「豚に始まって豚に終わる」といわれるほど、ポピュラーな食材です。
本土では、殺生を禁じる仏教の影響で、明治時代の文明開化のころまで肉を食べることは禁じられていましたが、沖縄では琉球王朝時代から豚肉を食べていました。
昔は田舎にいけば、1戸に1頭ずつ、必ず豚を飼っていたものです。私が戦前、沖縄にある祖父の家で数カ月暮らしていたときも豚を飼っていて、さつま芋やおかずの残りを餌にしていたのを覚えています。
年末など、行事の前になるとその豚を屠(ほふ)って肉を用意します。大切な食材ですから、すぐに食べる分以外は、「スーチキ」という塩漬けにして保存。
肉だけでなく、豚足や内臓もていねいに下処理をして、煮たり汁物にしたりしますし、面皮や耳はコリコリとした食感をいかして和え物に、血も「血イリチー」という炒め物になります。
白い脂身はからいりして「アンダ(ラード)」をとり、かめに蓄えて、炒め物を作る時に使用しました。アンダをとったあとの滓(かす)は「アンダカシー」といい、これも、汁物や煮物に入れて食べます。
こうして沖縄では豚肉をよく食べる、という話をすると、「コレステロールの心配は?」と聞かれることがあります。庶民にとって、豚肉は、行事のときに食べる大切なごちそうでしたから、それほど頻繁に食べていたわけではないのです。そのため摂取量は適度で、また、塊のままゆでて余分な脂肪を除く調理法や、海藻、野菜、芋などといっしょに食べることで、コレステロールの摂取が過剰になるということはありませんでした。

ウチナーンチュの大切なたんぱく源となってきた豚肉は、沖縄料理を語るうえでなくてはならない食材のひとつだ。沖縄の在来種は「あぐー」と呼ばれ、戦争でそのほとんどが失われてしまった。以降、いまでも「空飛ぶ豚」として語り継がれている、1946年に米軍が空輸してくれた500頭の豚や、ハワイの沖縄県人会から贈られたバークシャー種などが主だが、現在は、「あぐー」復活の動きも盛んになっている。
写真:嘉納 辰彦
(更新日:2006年10月05日)

岸 朝子(きし・あさこ)
大正12年東京生まれ。 女子栄養学園(現・女子栄養大学)卒。32歳で料理記者としてスタートし、「栄養と料理」編集長を経て、料理専門の編集企画会社「エディターズ」設立。93年より「料理の鉄人」(CX系)の審査員を務め、その批評振りと同時に、誉め言葉「おいしゅうございます」が評判に。
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