食材の話が続きましたが、今回は、調理法についてお話ししましょう。
沖縄では、豚肉はたいてい2キロ、3キロの塊で買い求め、「ゆでこぼし」という下ごしらえの作業をします。ゆでこぼしとは、肉を塊のままやわらかくなるまで長時間ゆでて、アクと余分な脂を取り除くこと。肉は取り出して煮物などの調理に、残ったゆで汁も「豚だし」として再利用します。これにより、動物性脂肪の摂りすぎにはならないんですね。
汁物や煮物のだしには、豚だしのほかに、かつお節や昆布などのだしもよく使います。沖縄には「アジクーター」という言葉がありますが、これはだしの濃い味を指します。
また、高温多湿の気候ですから、保存性を高めるため、炒め物、揚げ物といった油を使う調理法がポピュラーで、定番のチャンプルーやイリチーにも必ず油を使います。油を使うと味にコクがでるので、塩味が薄くても満足感を感じる奥深い味になります。
緑黄色野菜は、油が加わると、βカロテン(体内でビタミンAにかわる)の吸収率が上がり、加熱することでかさが減るのでたくさん食べられるという利点もあります。
私は子どものころから沖縄料理を食べているのでその味には慣れ親しんでいますが、食べ慣れない本土の人の中には、「しつこい」「油っこい」と感じる人もいるようです。
これは、濃いだしや油を使う料理が多いため。でも、このおかげで食塩の摂取量が少なくて済み、高血圧や心臓病を防ぐうえで役立っているのです。

沖縄では、削りたてのかつお節をどっさり入れて、「アジクーター」なだしをとり、煮物や汁物に使う。沖縄そばのつゆも、かつおだしがしっかりきいている。総務庁統計局「家計調査年報」(平成14年)によると、かつお節、削り節の購入数量、支出金額はいずれも沖縄県が全国第1位で、数量は全国平均の6.6倍、金額は3.8倍にものぼるという。
写真:嘉納 辰彦
(更新日:2006年11月02日)

岸 朝子(きし・あさこ)
大正12年東京生まれ。 女子栄養学園(現・女子栄養大学)卒。32歳で料理記者としてスタートし、「栄養と料理」編集長を経て、料理専門の編集企画会社「エディターズ」設立。93年より「料理の鉄人」(CX系)の審査員を務め、その批評振りと同時に、誉め言葉「おいしゅうございます」が評判に。
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