
江戸の昔から、自らの屋号にかけて、葱(ねぎ)を守り続ける千寿葱農家。
金次郎、清左ヱ門、重々しい屋号を、六代、七代と守るこだわりが本物を伝える。
究極の一品を生む農家と、流通を担う葱商。
この2つが存在して、初めて伝え続けることができた味だ。


千寿葱の歴史は古く、今から200年以上前の江戸で、すでに食されていました。
江戸が明治となり、すき焼きに代表される鍋屋が東京中に生まれると、「飛び切り甘くて煮崩れをおこさず、それでいて口の中に入れるととろける葱がある」といって評判になりました。そば屋からは「薬味にすれば1本でほかの倍以上取れる」といって、またたく間に東京中の鍋屋、そば屋、焼鳥屋、すき焼屋などに広まったのでした。
一般の店頭に並ぶことはなく、料理人だけに知られていた本物の一品。今でもこだわりの料理屋がお得意様です。

千寿葱を育てる農家はそれぞれ屋号を持ち、家名にかけて最高の一品を作ります。
作り続けて六代、七代、それでも連作障害を起こすことはなく、最高の味を作り続ける栽培ノウハウは、農薬や化学肥料に頼るものではないのです。もちろん、自身で納得できるものでなければ、出荷しません。
第一人者、六代目・金次郎さんは言います。「農薬なんかほとんど使わないよ。そもそも、虫や病気に負けるようなのはおいしくないよ」
確かに緑の部分には虫がかじったあとが残っています。


自らの屋号にかけるこだわり。いかにおいしい一品を作るかが課題であり、規格の箱に入るとか、入らないとかは、彼らの物差しにはありません。もちろん、より太く、そしてより巻きを多くし、より高い糖度と辛味やうまみを追求し続けています。
一般流通では、白い部分の長いことが品質の基準となっています。量販店の店頭に並ぶものは味ではなく、白くて長く、そろっていることが重視されます。その結果、生産者たちは、成長するごとに土を盛り、緑の部分を減らし、白い部分を増やし、高く売れる一品を育てようとします。
しかし、ちょっと考えればわかります。緑の葉によって、栄養は高まります。ところが、短時間に白く長くするために、緑の部分を減らすことに専念している昨今は、どうしても味が犠牲になります。
千寿葱は味を重視し、白い部分の比率は少ないかもしれませんが、極太で巻きが多く、健康で美味な食材です。
年中あることよりも、美味しい時期に旬の味覚として最大限の力を発揮できるように、長い場合は13カ月も費やします。


一般に流通している葱は1本50グラム前後、糖度は8〜10度です。一方の千寿葱、さすがに一流の料理屋が指名する品質です。夏でも15度、2月〜3月の絶頂期には17〜18度の糖度があり、重さは1本250グラムにもなります。
もちろん、一般の規格箱に入るものではないので、各農家が縄でしばって出荷します。その大きな束は「私こそ最高である!」と主張しているかのようです。
千寿葱は、夏にも作られ出荷されます。夏に葱? と思われるかもしれませんが、暑い時期だからこそ、薬効の元である硫化アリルを人は欲します。血行促進・発刊作用・疲労回復・消化液の分泌促進などなど、夏の食材としてとても理にかなっています。
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