
10月から11月に迎える産卵前の夏に、北海道・虎杖浜(こじょうはま)の目の前の海でとれる毛ガニは、まさに旬を迎えます。
北海道白老(しらおい)町虎杖浜は、その昔、アイヌの人々が愛した豊かな土地。自然を大切にするアイヌ精神に代わり、漁獲制限が大切な海の恵みを守ります。
7月中旬から8月中旬の約1カ月間、虎杖浜は「前浜毛蟹」(まえはまけがに)漁でにぎわいます。漁獲の制限量があり、109トンに水揚げが達した時点で終漁となります。


アイヌの時代、虎杖浜のあたりはアヨロと呼ばれていました。
元禄年間(1688〜1704)に作成された地図にもアヨロの名は出てきますが、そのはるか昔から、アイヌの人々はこの地に暮らしていました。
「阿与呂(アヨロ)」の語源は、「アイ・オロ・オ(川の中に矢を収める処)」とされ、アイヌの遺跡からは漁具のような矢尻も見つかっています。数百年前のアヨロ海岸、かつて集落が立ち並んでいたとされる一帯では、魚をとるための船を係留していたとの言い伝えもあるそうです。
虎杖浜のある白老町という地名は、アイヌ語「シラウオイ」から転訛(てんか)したもので、「虹の多い処」という意味です。この海岸線では、雨上がりにはしばしば、水平線上に美しい虹を見ることができます。
アイヌの人々はとてもロマンチックで、自然を大切にしたのだと思います。鮭(サケ)などの自然の恵みには神が宿ると考え、とても大切にしたアイヌの人々。今もゆかりのある人々がこの一帯には住んでいるそうです。その伝統が厳しい漁獲制限を可能にしたのかもしれません。


高度経済成長の時代。アイヌの自然と共存する精神は忘れ去られ、ひたすらとること、そして豊蟹なることに邁進した時代です。
北海道でも乱獲による資源枯渇が各地で顕在化し、次の漁場から漁場へと新たな資源を追い求めた時代です。資源を枯渇させる貪欲な時代ですが、当時の写真に写っている日本人の姿、今の日本人が失いつつある、夢や希望、そして必死に働く姿がそこにはあります。そこに写っている毛ガニの大きいこと。今ではほとんど見ることがない大きな毛ガニ。昔の海は豊かだったのです。

※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。