

ロシア産のカニは、水揚げ後、船倉で長時間、生かされています。そのため、水揚げから流通・加工までにかなりの時間がかかります。狭い船倉にぎゅうぎゅう詰めのカニはエサも食べません。一方、前浜で水揚げされる毛ガニはストレスが少ないといわれ、身痩(や)やみその減りが少なく、品質は格段に良くなります。
毛ガニは浅い海に生息するので、毛ガニ漁のカゴを仕掛けるのは、浜から見える範囲、まさに前浜です。
資源を守るため、メスと甲長8センチ未満のオスは海に戻されます。
虎杖浜では大切な資源を守るため、漁師がメスと小さなオス(甲長8センチ未満)をとることを禁じています。さらに1カ月の漁期で109トンの漁獲量制限があります。
私が港を訪ねた時、ちょうど、港への荷揚げ作業中の漁師が話してくれました。
「今日はたくさんの毛ガニがカゴに入ったけど、85%のカニは海に帰したかな」
いまどきの漁業では珍しい非効率。だからこそ、海の資源は守られています。カニは大きくなるのに何年もかかるため、養殖では採算が合いません。必然的に自然の資源を大切に守ることになります。

朝の8時過ぎ水揚げされた毛ガニは港の水槽に移され、10時10分からの競りを待ちます。大・中・小と大きさ別に3回の競りが、入札方式で行われます。欲しい量とキログラム単価を書いた紙を競り人に渡し、高い値段で札を入れた順番に選び、買う権利を獲得します。
大口の仲買人にまじって、行商のおばあちゃん達も入札に参加します。中には80歳を超えた名物ばあちゃんもいます。築地市場などの慌しい競りではなく、ほのぼのとして、部外者の私が競り場にいても違和感がありません。

落札された毛ガニは落札者が持ち帰り、その日の午後にはゆで上げられ、地元の旅館やホテルの宿泊客の胃袋に消えたり、道路沿いの売店の店頭に並んだり、通信販売で全国に送られます。
前浜の毛ガニは非常に漁獲量が少ないので、一般の市場にはほとんど流れません。わずか109トン、年間数万トンのロシアからくる輸入毛ガニと比べれば、ほとんど無いに等しい量です。
109トンが少ないのか? ロシアから輸入される数万トンが多いのか? 109トンでも、1匹500グラムの大サイズで換算すれば、約20万匹です。1人1匹食べるとしても、20万人は楽しめるのです。
飽食の時代、自然まかせの食材は、旬の一瞬一瞬、自然に感謝して食す気持ちが必要ではないかと思います。
厳しい自然の中で生き抜いてきたアイヌの人々の価値観。我々現代人も参考にすべきことはたくさんあると思います。お金さえ出せば、いつでも何でも食べられるという便利さと豊かさを、あらためて考えてみてください。
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