
代表的なメニューのひとつが「ドゥルワカシー」。蒸した田イモをマッシュポテトのようにつぶし豚肉やカマボコ、茎などと合わせ、豚のダシ汁を加えよく練り上げたもの。里イモの味を濃厚にしたような深みのある味わいで、ねっとりした食感が独特だ。さいの目に切られた豚肉は、脂身のおいしい三枚肉を使っているが、調理の前によくゆでて余分な脂肪を落としてあり、豚の旨味とイモの風味がよくなじんでいる。琉球王朝時代には士族の間で高級なもてなし料理として供されていたという伝統の味だ。
また、茎や豚肉、豆腐などを具にした「ムジ汁」は、出産祝いに欠かせない料理として、沖縄の人々に受け継がれてきたもの。ムジは水に浸けてアクを抜き、表面の繊維質を取ってあるので、エグみもなくシャキッとした歯触りが楽しめる。

田イモは実に変幻自在な食材だ。ゆでただけだと、ちょっとねっとりしたホクホク感のあるイモの味がおいしいが、つぶしてよく練りあげると、粘りが強くなり田イモならではの食感が出てくる。ダシを効かせた塩味にも合うし、砂糖やみりんで甘く味を付けた「リンガク(田楽)」も違和感がない。
この田イモ、見た目の地味さと裏腹に健康的な食材としても注目されている。豊富に含まれる食物繊維は、小腸を越えて大腸で分解されるので、便通を整えたり、血圧を安定させる働きがあるそうだ。カルシウムやビタミンB1、鉄分を多く含み、体内の余分な塩分を尿とともに排泄させる働きを持つカリウムの含有量も豊富だという。
ところで、おいしい料理に欠かせないのが旨い酒だが、地元の「金武酒造」では1988年から興味深い試みを続けている。
地下30メートルにある鍾乳洞の古酒蔵で、泡盛を熟成させているのだ。鍾乳洞があるのはカフェレストラン長楽の向かいにある金武観音寺の境内地下。そこは金武宮(きんぐう)として、古くから大切に守られてきた聖地でもある。
3年以上熟成させた泡盛はクース(古酒)と呼ばれ、一般の泡盛とは一線を画する貴重な存在。戦前の沖縄には百年、二百年にわたって熟成を重ねたクースもあったと言われ、慶事や大事な客人をもてなすときに、小さなおちょこで一杯だけ……というのが、王朝時代から続く正しい飲み方である。

年間を通じて17〜18度と気温が安定している洞内には、1万本近くのボトルが並び、静かに熟成を重ねている。ぜひとも味わってみたいところだが、直接この地に足を運び、自ら申し込まなければ、ボトルを預けることはできないという。
田イモ料理を食したその足で、鍾乳洞にボトルをキープしに行けば、5年後にはクースが「ぬちぐすい」になるだろう。「自分の酒が南の島の鍾乳洞に眠っている……」、慌ただしい日常の中で、そのことに思いを馳せる幸せな時間こそが、真の「ぬちぐすい」なのかもしれない。

(文・写真:林秀美)

(更新日:2007年11月07日)
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