
「うちでは、昔ながらのご馳走のことを、『ばばちゃんごっそ』と呼んでます。これ、わが家言葉(笑)。おばあちゃんのご馳走の意味。色が茶色っぽいの(笑)。でも、これで子どもたちを健康に育ててきましたからの」
子育てをはじめた当初は「とってもビンボーだった」という美佐子さん。でも、土地だけはあった。子どもたちをなんとか食べさせるために、畑で安全な食物を栽培することを考えて、有機栽培を始める。
「旬の食物はいちばん、体に力をくれるでしょ。それにいちばん、安上がりですからの」
こう話す美佐子さんは、現在、三足のわらじを履いている。ひとつは農業、ひとつは農家民宿、そしてもうひとつは鶴岡の市街地で3年前に始めた「やさいの荘の家庭料理 菜ぁ」である。「『菜ぁ』では自分で育てたこだわりの季節の野菜を使って、京料理を学んだ板前さんに料理を作ってもらっています」。

そんなパワフルな美佐子さんをサポートしているご主人の喜作さんも、合鴨農法による稲作や、庄内の在来作物・だだちゃ豆の栽培、有機農業などを行なう地元のこだわり農家で作った「庄内協同ファーム」の運営にも関わっている。
ちょうどその日、喜作さんの出身校である山形大学では、「山形在来作物研究会」が行われていた。「在来作物」とは、「通常、明治以降の近代育種が始まる以前にすでにある地方で栽培されていて、現在まで伝わってきた品種」のこと。庄内にはだだちゃ豆をはじめ、温海カブ、民田ナス、酒田キュウリなどまだ多くの在来作物が残されている。
喜作さんがこだわる在来品種、美佐子さんがこだわる「旬」と「ばばちゃんごっそ」、そしてふたりがこだわる「自然であること」──ここに庄内の「ぬちぐすい」は守り、育まれている。

おふたりの話を聞いているうちに、テーブルには何種もの冬の庄内の郷土料理が並んだ。ぶりこをたっぷりとはらみ、甘い味噌をのせたはたはたのでんがく。海老芋にも似た地元で「ズイキタマ」と呼ばれる芋と油揚げ(※関東でいう厚揚げ)の煮付け。庄内の干し柿を使ったなます。庄内赤カブの甘酢漬け。保存食の乾燥させたズイキ(芋茎)を戻して油揚げと一緒にに炊いた炒り煮。誰もが「おしん」を思い出す、大根飯。そして、「足元から雪が降る」と称される庄内平野の冬に、人々の体を芯から温める納豆汁。
土地に根づいて暮らす人の語る「みみぐすい」と、もてなしの「ぬちぐすい」。最高の贅沢(ぜいたく)を味わった。

(文・写真:平井かおる)

(更新日:2008年01月09日)
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