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日本百名山

第6回 鹿島槍岳 笠ヶ岳 日本百名山

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昼の雲

舟のさまして動かざる

鹿島鎗てふ

藍の山かな

これは三好達治君の歌である。この詩人はずっと以前志賀高原の発哺に滞在していたことがあって、その時の作である。発哺温泉から眺める北アルプスの大観はすばらしい。眼路の果てに、妍を競うように高岳雄峰が立ち並んでいる。その見事なパノラマの中で、鹿島槍岳の美しい形が三好君の眼を惹いたに違いない。

鹿島槍は私の大好きな山である。高い所に立って北アルプス連嶺が見えてくると、まず私の眼の探すのは、双耳峰を持ったこの山である。北槍と南槍の両峰がキッとせり上がっていて、その二つをつなぐ、やや傾いだ吊尾根、その品のいい美しさは見倦きることがない。

一口に美しいと言っても、笠ヶ岳のように端正でもなく、薬師のように雄大でもなく、剣岳のように峻烈でもない。そういう有り合わせの形容の見つからない、非通俗的な美しさである。粋という言葉が適当しようか。粋でありながら決して軽薄ではない。大ざっぱに山を見る人には見落とされがちな存在であるが、いったんその良さがわかると、もう好きで堪らなくなる、そういう魅力を持った美しい姿である。

魅力は何と言っても両槍とその間の吊尾根の美しさだが、ことにこの山を真横から見るより、斜めか、あるいは縦に眺めた方が、いくらか冗漫に思われる左右の稜線が縮まって、いっそう引き緊まった美しさになる。

この山は信州側から見るのがよく、越中側からでは、例えば立山連峰から眺めては、やや精彩を欠く。魅力的な吊尾根が間延びしてしまう。信州側からはどこから見てもいいが、ことに印象的だったのは、糸魚川街道の湖のほとりを歩いていて、湖水の向こうを仕切る前山の上に、二つの槍がスックと頭をもたげているのを見つけた時だった。あるいは、五竜岳の頂に立って、深い谷を距てたすぐ真向かいに、流れ行く薄雲の合間に隠見する吊尾根を望んだ時だった。ああいう構図は、どんな天才的な画家も思いつくまい。

鹿島槍岳という名前は明治以後で、山麓の鹿島部落の名を採ったものである。この部落は平家の落武者の住んだ所と伝えられ、さらにその奥の、鹿島槍北面の岩壁の下にはカクネ里という地名さえ残っている。カクネ里はカクレ里の転訛であろうか。

しかしそれ以前、ずっと古くからこの秀れた山には名前があった。信州側では、背比べ、あるいは鶴ヶ岳と称したという。背比べは双耳峰から来たものであり、鶴ヶ岳は残雪の模様に因んだものである。越中側では、後立山という称呼があった。越中の古文献に後立山という名があり、その山がどれを指すものかいろいろ論議があったが、結局は今の鹿島槍がそれであることが確かになった。 (後略)

※出典:深田久弥『日本百名山』(1964年新潮社刊)の朝日文庫版から再録

よりみち百名山

泊

木喰上人が愛したと伝わる美麻温泉の宿

電話:0261-29-2511

信州美麻温泉 もくじき荘/大町市

露天風呂からは、木々のざわめきや野鳥のさえずりが間近に聞こえる
ロビーには、木喰仏の写真が飾られている
もくじき荘は曲がりくねった山道の先に立つ一軒宿

江戸時代に全国を行脚し、一刀彫りの木喰仏を各地に残した「木喰上人」。美麻にも仏像を残しており、もくじき荘の名はこの上人に由来する。湯は宿から約500メートル離れた場所にわく源泉から引いている。豊富な湯量が自慢で、湯の温度は約40度。切り傷や慢性皮膚病には特に効能があるといわれる。岩造りの露天風呂は、美麻の山々が間近に迫り、湯船につかりながら春の新緑や秋の紅葉、冬の雪景色を満喫できる。日帰り入浴の場合は、2時間まで休憩室の利用が無料だ。

食事は、地元で採れた山菜やキノコをふんだんに使った郷土料理で、ボリュームたっぷり。秋には、近くの山で採れたマツタケの料理を用意してくれるのもうれしい(要予約)。

所在地: 長野県大町市美麻4330
営業時間: 食堂:12〜14時、17〜20時 外来入浴:10〜16時
定休日: 不定休
料金: 1泊2食付8000円〜 外来入浴600円(休憩室は2時間まで無料)
駐車場: 60台
交通: JR大糸線信濃大町駅から梨の木峯行きバスで20分、日影下下車すぐ

学

貴重な登山資料は見応え十分

電話:0261-22-0211

大町山岳博物館/大町市

博物館は市街を見下ろす高台に立つ
井上靖の小説『氷壁』のモデルにもなった「ナイロンザイル事件」の切れたザイルなどが展示されている

「岳のまち・大町」を象徴する市立大町山岳博物館は、装備や道具を中心とした北アルプスの登山史を紹介している。館内では昔の山小屋を再現した模型や、世界の登山家が実際に使用したピッケルなど、貴重な資料を展示。

1949(昭和24)年に槍ヶ岳で遭難し、死後『風雪のビバーク』が出版された松濤明の最後の手帳もある。最上階からは、北アルプスのパノラマが一望できる。

所在地: 長野県大町市大町8056-1
営業時間: 9〜17時(入館は16時30分まで)
定休日: 月曜(祝日の場合は翌日、7〜8月は無休)
料金: 400円
駐車場: 30台
交通: JR大糸線信濃大町駅から車で5分

湯

朝7時から楽しめる天然温泉

電話:0261-23-7100

ゆーぷる木崎湖/大町市

風情ある露天風呂「月乃湯」

ゆーぷる木崎湖は1996(平成8)年にオープンした日帰りの温泉・リラクゼーション施設で、青い大きな屋根が目印。温泉棟には和風の「月乃湯」と洋風の「星乃湯」の二つがある。ともに内湯と露天風呂を備え、男女が日替わりで楽しめる。湯はク[温泉と七倉温泉の湯を混合した単純泉で、疲労回復に効果的だ。ジャグジーやサウナ、休憩室もある。売店、「レストラン仁科の杜」、別棟に温水プール(別途600円)を併設する。

所在地: 長野県大町市平10639-1
営業期間: 大浴場:7〜21時 売店:11時〜20時30分 「レストラン仁科の杜」:11時〜20時30分 温水プール:10〜21時
定休日: 第3木曜(祝日の場合は翌日)、温水プール:木曜(祝日の場合は翌日)
料金: 600円(65歳以上は400円)
駐車場: 100台
交通: JR大糸線信濃大町駅から白浜行きバスで16分、ゆーぷる木崎湖下車すぐ

買

古の伝統が息づく手すき和紙

電話:0261-22-0579

信州松崎和紙工業/大町市

2代目の社長・腰原泰雄さんは和紙の研究に余念がない

平安時代から950年以上の歴史を誇る信州松崎和紙。信州松崎和紙工業はその伝統を受け継ぎ、独自の処理を施したカエデやブナの葉をすき込んだ和紙を開発した。この技術により和紙を丸めても中の葉が崩れなくなり、財布など多彩な商品に応用できるようになった。土産物では「はがき5枚入り」(350円)や「茶托5枚組」(900円)が人気。はがきを作る紙すき体験もできる(要予約)。

所在地: 長野県大町市社松崎6562
営業時間: 8〜18時
定休日: 無休
駐車場: 7台
交通: JR大糸線信濃大町駅から徒歩15分

食

サクッとした衣と特製ソースが決め手

電話:0261-22-0220

昭和軒/大町市

秘伝のソースを使った「ソースがけかつ丼」
3代目の主人・相澤淑治さんは、メニューのイラストやのれんの絵を自ら描く

長野県で最初に「ソースがけかつ丼」を出した店として知られる昭和軒。ご飯に載せた千切りキャベツとサクッと揚がったかつは、ジューシーでうまみたっぷり。かつにかけるソースは、1927(昭和2)年の創業以来、最初のたれに注ぎ足しながら、3代にわたり改良を重ねたもの。甘さと辛さのバランスが絶妙で、食べ始めたら最後まで箸が置けないと評判の丼だ。

所在地: 長野県大町市大町3215
営業期間: 11時〜14時30分、17〜19時30分
営業時間: 不定休
駐車場: 5台
交通: JR大糸線信濃大町駅から徒歩3分
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