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日本百名山

第9回 乗鞍岳 御岳 日本百名山

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普通御岳は日本アルプスの中に入れられるが、この山は別格である。そういうカテゴリーからはみ出している。北だの、中央だの、南だのと、アルプスは混みあっているね、そんな仲間入りは御免だよ、といいたげに悠然と孤立している。

たしかにこのヴォリュームのある山は、それだけで一王国を形成している。一個の山として、これだけ図体の大きい存在も稀である。山頂は、最高の剣ヶ峰を初め、継母岳、摩利支天山、継子岳などからなっていて、その間に、二ノ池、三ノ池、水の涸れた一ノ池、あるいは賽ノ河原と呼ばれる広々した原、ザクザクした外輪壁などがあちこちにあって、はなはだ変化に富んでいる。しかし遠くから望むと、それらすべてが一つの大きな頂上となって、そこから裾へ向かっておおらかな斜線をおろしている。

この斜線がみごとである。厖大な頂上を支えるのに十分な根張りをもって、御岳全体を均衡のとれた美しい山にしている。遠望では裾野まで見ることは出来ない。前山の上に浮いた上半身である。それがいっそうこの山を神々しく見せるのであろう。昔から木曾の御岳さんは夏でも寒いとうたわれて、信仰の山となったこともうなずかれる。

富士山、鳥海山、立山、石鎚山など、古くから宗教登山が盛んであったが、現在では一般登山の中に解消されている。信仰登山の組織と戒律と風俗を今でも濃厚に保っているのは、御岳だけだろう。夏に表口の王滝や黒沢から登って行くと、道が白く見えるくらい白衣装束の信者が続いている。それが子供から爺さん婆さんに及んでいる。彼等は登山に趣味を持っているわけではない。私の知っているある下町のお茶屋のおかみさんは、およそ山に縁のない人だが、毎年オンタケサンにはお詣りを欠かさない。

広い頂上の然るべき所には、あちこちに宗教的モニュマンが建っていて、信者の一群を率いた先達が、そこで加持祈とうをしているさまが眺められる。信者にお祓いを施す時の先達の形相は物凄い。全くここは信仰の山、庶民の山であって、ピッケルに登山靴のアルピニストは、疎外者のような感じである。彼等はそういう山を俗化と呼んで敬遠する。わずかに季節はずれの時期に、少数の純粋登山者を見るくらいである。

しかしこの茫洋と大きい山は、まだまだ未知のものをたくさん含んでいる。おかしな話だが、登山者に敬遠されたおかげで、この山の秘密が保たれている。その上、この山の原始性を守ったのは、乱伐を許さない広大な御料林である。ヒノキ、アスナロ、コウヤマキ、サワラ、ネズコが木曾五木と称せられて昔から有名だが、御岳の周辺を覆う鬱蒼とした森林は、まことにみごとである。 (後略)

※出典:深田久弥『日本百名山』(1964年新潮社刊)の朝日文庫版から再録

よりみち百名山

泊

御嶽神社別殿がある藤村ゆかりの宿

電話:0264-48-2006

滝旅館/王滝村

建物は純和風で、創業時の面影を残す囲炉裏の間もある
「御嶽神社別殿、島崎藤村展示室とも風呂上がりに浴衣姿のまま立ち寄れる、そんな気楽な宿です」と第22代宮司の滝和人さん
『夜明け前』執筆のために当館を訪れた島崎藤村からの礼状などがある展示室

御岳湖を望む高台に立つ滝旅館は、室町時代中期から御嶽神社の宮司を務める滝家が、100年以上にわたって営んでいる宿坊。館内には同神社の別殿が併設され、宿泊客も祈祷が受けられる。ロビー横には「島崎藤村展示室」がある。滝旅館と交流があった馬籠(現岐阜県中津川市)出身の作家・島崎藤村の代表作『夜明け前』に登場する王滝村の宮下家は、この宿がモデルだ。展示室には、藤村の実父・正樹直筆の書や掛け軸、藤村直筆の礼状などゆかりの品々が並ぶ。

食事は、イノブタやタラノメなど地元の素材を使った料理。藤村が実際に食べたメニューのほか、精進料理も味わえる。

所在地: 長野県木曽郡王滝村3417-1
料金: 1泊2食付8500円〜
駐車場: 30台
交通: JR中央本線木曽福島駅から王滝行きバスで40分、終点下車、徒歩3分

学

王滝の歴史遺産を見てひと休み

電話:0264-48-2648

御嶽神社史料館 郷土料理ひだみ/王滝村

中央にあるのは、木曽代官の山村氏が奉納した絵馬
入り口前にある巨大な絵馬の看板が目印だ
「どんぐりこおひい」にはホット(400円)とアイス(450円)がある

御嶽神社史料館は、王滝村の歴史資料や江戸時代に信者が御嶽神社に奉納した絵馬を展示している。絵馬のなかには、縦2メートル、横3メートルの巨大なものもある。また、かつての尾張藩の木曽山林支配に関する資料からは、王滝の歴史的な変遷もよく分かる。2007(平成19)年4月に、山岳歴史文化会館から現在の名称に変わった。

見学後に立ち寄りたいのは、併設の郷土料理店・ひだみ。店名の「ひだみ」とは、王滝村の方言で「どんぐり」という意味だ。地元・王滝で救荒食として利用されてきたドングリを、現代風に調理して提供する。「どんぐりこおひい」(400円)は心が安らぐ香りの一杯。独特の食感の「どんぐりようかん」もつく。

所在地: 長野県木曽郡王滝村3153-2
営業期間: 9時〜16時30分(ひだみは16時まで)
定休日: 月曜(祝日の場合は翌日)
料金: 200円
駐車場: 15台
交通: JR中央本線木曽福島駅から御岳田の原行きバスで44分、二合目下車、徒歩2分

食

登山の前後はイノブタ鍋でスタミナ補給

電話:0264-48-2738

王滝食堂/王滝村

キノコやネギなどと一緒に煮込む。みそベースのスープが食欲をそそる

創業50年を迎える王滝食堂は、イノブタ料理が人気の食事処。イノブタはイノシシとブタを掛け合わせたもの。肉の味はブタに似ているが甘みがあり、臭みも少ない。たくさん食べても胃もたれしないのが特徴だ。定番の「いのぶた鍋」(1人前1500円、2人前〜)は、ごはんとみそ汁がついた定食。季節を問わずおいしく食べられる。鍋のほかに丼物などのメニューもある。スタミナ補給に登山の前後に立ち寄りたい。

所在地: 長野県木曽郡王滝村2708-2
営業時間: 11時〜14時30分、17〜21時(ラストオーダーは20時)、日曜、祝日は11〜20時
定休日: 不定休(7月20日〜8月は無休)
駐車場: 10台
交通: JR中央本線木曽福島駅から王滝行きバスで40分、終点下車、徒歩1分

湯

眺望が抜群の露天風呂が自慢

電話:0264-48-2753

王滝温泉 うしげの湯/王滝村

鹿が湯に入って傷を治したという伝説があり、地元では「鹿湯」とも呼ばれる

王滝温泉 うしげの湯は、御岳が望める日帰り入浴施設。内湯と露天風呂を備える。檜造りの露天風呂は、木々に囲まれていてリラックスできる。無色透明の湯は低温の源泉を加熱したものだが、肌への「あたり」がやわらかく、神経痛や筋肉痛、関節炎などに効能がある。施設内にはそばや軽食を供する食堂もあり、湯上がりにのんびり過ごすにはうってつけ。登山帰りの入浴で、疲れを癒やしたい。

所在地: 長野県木曽郡王滝村3189-8
営業時間: 11時〜20時30分
定休日: 木曜(7月20日〜8月は無休)
料金: 600円
駐車場: 40台
交通: JR中央本線木曽福島駅から御岳田の原行きバス39分、うしげの湯前下車、すぐ

見

十手や証文など関所にまつわる資料を展示

電話:0264-23-2595

福島関所資料館/木曽町

穂高岳山荘の創設者・今田重太郎など、近代登山の発展に尽力した功労者を紹介
中部山岳地帯全域を見渡せるジオラマ

江戸幕府が五街道に配した関所のうち、箱根や碓氷と並び「天下の四大関所」と称された福島関。木曽川を見下ろす高台にある。明治時代に取り壊されたが、1975(昭和50)年に関所門が復元されたのにともない、関所建物を模した資料館がオープンした。

館内には、火縄銃や十手といったかつての武具や道具、証文などを展示。関所のジオラマのほか、通行人の取り調べをした上番所や下番所も再現している。

所在地: 長野県木曽郡木曽町福島関町4748-1
営業期間: 8時〜17時30分(17時まで受付、12〜3月は8時30分〜16時30分)
定休日: 無料(12〜3月は火曜)
料金: 300円
駐車場: 8台
交通: JR中央本線木曽福島駅から徒歩20分

(更新日:2008年03月19日)

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