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日本百名山

第11回 霧ヶ峰 美ヶ原 日本百名山

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妙な言い方だが、山には、登る山と遊ぶ山とがある。前者は、息を切らし汗を流し、ようやくその頂上に辿り着いて快哉を叫ぶという風であり、後者は、歌でもうたいながら気ままに歩く。もちろん山だから登りはあるが、ただ一つの目標に固執しない。気持のいい場所があれば寝ころんで雲を眺め、わざと脇道へ入って迷ったりもする。

当然それは豊かな地の起伏と広濶な展望を持った高原状の山であらねばならない。霧ヶ峰はその代表的なものの一つである。

まだ戦争の始まらない頃、私は霧ヶ峰で一夏を過ごし、遊ぶ山の楽しさを十分に味わった。もうとっくに焼けて無くなってしまったヒュッテの二階の、そこから真正面に乗鞍、御岳、木曾駒の見える一室を私が占め、隣の部屋には小林秀雄君がいた。二人は、天候さえよければヒュッテの主の長尾宏也君を引っぱり出して、広い高原を歩き廻った。

遊ぶ場所には事欠かなかった。霧ヶ峰の最高峰は車山であるが、それも骨の折れる山でなく、ゆるやかな傾斜をのんびり登って行くうち、いつか三角点に達するといった風である。その細長い頂から、すぐ真向かいに蓼科・八ヶ岳の連峰が手に取るように見えた。ことに夕方、落日を受けた赤岳が、その名の通り赤く映えた姿は、美しさの限りであった。

車山の裾は、どこまでも果てしないと思われるほど、広い広い草地が伸びていて、その中に踏跡らしいものが幾筋もついていた。そんな八幡の藪知らずのような細道を迷わずに辿れるのは、ヒュッテの主くらいであった。もっとも迷ったところで大したことはない。私など車山へ登る毎に道が違っていた。

夏の高原は、背丈ほどあるシシウドの白い花と、日光キスゲの橙色で覆われた。私は外へ出る毎にさまざまの花を摘んできて、それを植物図鑑で確かめるのを楽しみにしていた。そこを住みかにする狐や鷲も長尾君は知っていた。

八島平と呼ばれる大きな湿地は、以前は沼だったのが次第に蘚苔類の成長によって湿地に変わってきたのだそうで、その沼の名残が八島ヶ池・鎌ヶ池となって一隅に残っていた。ひっそりと静かで、しかも明るい沼であった。

その近くに旧御射山という丘があって、鎌倉時代にはそこが国家的演武場だったという。その丘が見物席で、今でも桟敷のような段々が幾筋もついていた。頼朝がここで狩座を催したことは、信ずべき古い記録に出ているそうである。 (後略)

※出典:深田久弥『日本百名山』(1964年新潮社刊)の朝日文庫版から再録

よりみち百名山

食

白樺林の中にある小さなイタリア料理店

電話:0266-68-2856

オステリア白樺/茅野市

「まきば風パスタランチ」(1800円)は開店当初からの人気メニュー

車山のペンション群の中にある「オステリア白樺」は、16席だけの小さなイタリア料理店。名物は直径約20センチの「ローマ風クリスピーピッツァ」と「まきば風パスタランチ」。ミルクとクリームがほどよくからみあうパスタの味わいは絶品だ。以前はペンションだったが、料理のおいしさが評判になりレストランとして生まれ変わった。窓の外に広がるシラカバやモミの林も、料理の味を引き立てる名脇役だ。

所在地: 長野県茅野市北山車山高原3412-80
営業時間: 12〜15時、18〜20時(夜は要問い合わせ)
定休日: 水、木曜(7月後半〜8月は無休)
駐車場: 9台
交通: JR中央本線茅野駅から車で50分

湯

洋風建築と千人風呂が楽しめる

電話:0266-52-0604

片倉館/諏訪市

諏訪湖に面した「片倉館」は、ドイツ風レンガ造りの建物が特徴の日帰り入浴施設。岡谷市の製糸業が全盛だった1928(昭和3)年、片倉財閥の2代目・片倉兼太郎が、女工たちの福利厚生施設として建てたもので、翌年には一般にも開放された。館内には、彫刻やステンドグラスなど往時の装飾が至るところに見られ、建造物の造作にも興味を引かれる。

名物の「千人風呂」は、神経痛や糖尿病などに効く天然温泉を満々とたたえた大理石の浴槽で、100人が同時に入浴できる。深さ1.1メートルの湯船の底には玉砂利が敷き詰められ、足裏に心地よい感触が広がる。無料の休憩室や食堂のほか有料の家族室もあり、のんびりとくつろげる。

大浴場には「千人風呂」とジャグジーがあり、男女湯の境の壁にはステンドグラスがはめ込まれている
昭和初期の建築様式を見せる食堂では、「かつ丼」(700円)、「マーボなす丼」(600円)などが味わえる
片倉館は、旧オーストリア大使館などの名建築を数多く手がけた森山松之助の設計
所在地: 長野県諏訪市湖岸通り4-1-9
営業時間: 10〜21時(20時30分まで受付)
定休日: 第2、4火曜
料金: 500円 家族室 800円(3〜10名、入浴料込み)
駐車場: 100台
交通: JR中央本線上諏訪駅から徒歩5分

詣

7年に一度の御柱祭で知られる古社

電話:0266-52-1919

諏訪大社下社/下諏訪町

厳粛な空気に包まれた秋宮境内。楼門造りの幣拝殿、その脇に左右片拝殿など豪壮な社殿が並ぶ。写真は神楽殿
2月から7月の間、秋宮からご神体が移され祀られる下社春宮

全国に約1万の分社をもち、信濃国一之宮として崇敬される「諏訪大社」は、諏訪湖を隔てて南北に上社(本宮、前宮)、下社(春宮、秋宮)が鎮座する。凛と張りつめた空気がみなぎる下社秋宮には本殿がない。拝殿の背後の御神木が御神体だ。祭神はヤサカトメノミコトとタケミナカタノミコト。宝物館には下社に関する資料が展示されている。7年に一度執行される御柱祭は、この4宮の社殿の四隅に立つ御柱の建て替えと御宝殿の造営を行う祭事で、全国的に知られている。

所在地: 長野県諏訪郡下諏訪町上久保5828(秋宮)
料金: 見学自由
駐車場: 200台(秋宮)
交通: JR中央本線下諏訪駅から徒歩10分
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