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日本百名山

第13回 北岳 間ノ岳 日本百名山

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日本で一番高い山は富士山であることは誰でも知っているが、第二の高峰はと訊くと、知らない人が多い。北岳だよと教えても、そんな山はどこにあるかといった顔つきである。甲斐の白峰だと言うと、その名前だけは承知している。『平家物語』に、

……宇都の山辺の蔦の道、心ぼそくもうちこえて、手ごしをすぎてゆけば、北にとをざか(ッ)て、雪しろき山あり。とへば甲斐のしら根といふ。其時三位中将おつる涙ををさへて、かうぞおもひつゞけ給ふ。

  おしからぬ命なれどもけふまでぞ

    つれなきかひのしらねをもみつ

という有名な一節があるからである。私はかつて冬のよく晴れた一日、その駿河の「手ごしをすぎ」たあたりまで、山を見に行ったことがある。富士山の西側を通して遙か遠く白銀に光る山を眺めた。しかしそれは北岳ではなかった。もっと手前の赤石岳や悪沢岳であった。

しかし駿河を過ぎて武蔵国へ入ると、汽車の窓から甲斐の白峰、つまり白峰三山と呼ばれる北岳、間ノ岳、農鳥岳がハッキリ見える所がある。戦前私は鎌倉に住んでいたが、東京へ出てくる途中、六郷川鉄橋を渡るあたりで、もしキリッと空気の澄んだ日であると、眼を北の空へやることを忘れなかった。そして彼方の青空に、純白の山が三つ並んでいるのを見逃さなかった。そのたびに私の好きな「北に遠ざかりて、雪白き山あり」を口ずさむのが常であった。

汽車からもっともよく見えるのは、中央線の笹子トンネルを抜け、勝沼から甲府盆地へ駈け下るしばらくの間である。盆地を距てた真向こうの空を仕切って、白峰三山が威厳と優美を兼ねて連なっているのを望んでは、山の好きな人で胸の高鳴らぬ者はあるまい。

三山のうちの最高峰が、一番北に位置する北岳であって、昔から甲斐ヶ根という名前は、この峰にあてられていた。『甲斐国志』に「この山、本州第一の高山にして、西方の鎮たり、国風に詠ずるところの甲斐ヶ根これにして」とあり、その頂上に日の神を祀ったという記載があるから、少なくとも二百年前から北岳の存在は歴として認められていたのである。

そんなに古くから名の聞こえた山であり、わが国第二の高峰でありながら、あまり人に知られていないのは、一つにはこの山が謙虚だからである。どうだおれは、といったような、抜きん出て人の眼を惹こうとするところがない。奇矯な形態で、その存在を誇ろうとするところもない。それでいて高い気品をそなえている。いつも前山のうしろに、つつましく、しかし凜とした気概をもって立っている。奥ゆかしい山である。(後略)

※出典:深田久弥『日本百名山』(1964年新潮社刊)の朝日文庫版から再録

よりみち百名山

泊

南アルプスの玄関口で親しまれる一軒宿

電話:055-288-2306

桃の木温泉別館 山和荘/南アルプス市

1869(明治2)年創業の桃の木温泉は、夜叉神峠にも近い、御勅使川沿いにある一軒宿。建物は本館の桃栄館と別館の山和荘からなる。1987(昭和62)年竣工の山和荘は、すべての客室(15室)にバス、トイレ、エアコンを備え、舞台つきの大広間などもある。

男女別のタイル張りの大浴場と、露天風呂がある源泉かけ流しの温泉は、アルカリ性単純泉で、胃腸病、神経痛、リウマチなどに効能がある。露天風呂からは、南アルプスの高峰が一望でき、開放感にひたれる。

夕食はアユ、イワナなどの川魚料理が部屋出しされ、落ち着いた雰囲気で旬の味を楽しめる。

御勅使川のせせらぎを聞きながらつかる露天風呂は格別
白峰三山を望む絶好の地にある一軒宿
「春は一面ヤマモモの花に埋め尽くされます」と女将の中沢由美さん
所在地: 山梨県南アルプス市芦安芦倉1672
料金: 1泊2食付1万3000円〜 外来入浴1000円(10〜18時)
駐車場: 20台
交通: JR中央本線甲府駅から芦安行きバスで45分、終点下車、バス停から送迎あり(要予約)

見

江戸中期の名残を見せる豪農の家

電話:055-282-7269

安藤家住宅/南アルプス市

茅葺きの長屋門が豪農の家らしい風格を漂わせる
見事な松に囲まれた寄せ棟造りの茶室は1861(万延2)年築

江戸時代中期から旧西南湖村の名主を務めた安藤家。国の重要文化財に指定されている旧宅は、県道一軒茶屋荊沢線から南へ入った住宅地にある。1782(天明2)年建造の茅葺き切り妻造りの長屋門は、周囲に屋根塀をめぐらし、堂々たる風格を見せる。敷地内には1708(宝永5)年築の入り母屋造りの主屋、3棟の土蔵が立ち、さらに東側に茶室、庭園、池が配されている。囲炉裏のある主屋内部など見どころも多い。

所在地: 山梨県南アルプス市西南湖4302
営業時間: 9時〜16時30分
定休日: 月曜、祝日の翌日
料金: 120円
駐車場: 15台
交通: JR身延線東花輪駅から車で15分

食

肉のうまさをそのまま揚げるかつが評判

電話:055-284-1929

とんかつ かつ金/南アルプス市

ヒレかつとエビフライを盛り合わせた例

知る人ぞ知るとんかつの名店「かつ金」。店主は材料にもこだわり、脂のバランスがよく、甘みがあると評判の地元産フジザクラポークを中心に仕入れる。注文を受けてから上質の油で手際よく揚げるかつは、サクッとした食感と柔らかい肉のうまみが絶妙だ。ヒレかつ定食(1500円)やロースポークソテー定食(1650円)とともに、香ばしいカリカリじゃこのサラダ(430円)も好評。

所在地: 山梨県南アルプス市荊沢852-3
営業時間: 11時30分〜14時 17〜22時(ラストオーダーは21時))
定休日: 火曜
駐車場: 15台
交通: JR身延線市川大門駅から車で10分
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