塩見岳の特徴は、漆黒の鉄の兜、あるいはズングリした入道頭、こうおぼえておけば、遠くの山から南アルプスを眺めても、その中の塩見岳を見落とすことはないだろう。
登山の対象としての南アルプスは明治末年に開かれたが、その頃の少数の登山家はまだ塩見岳という名を知らず、これを間ノ岳と呼んでいた。白峰山脈の同名の山と区別するため、赤石の間ノ岳と呼んでいた。おそらく仙丈から赤石まで続く山稜の間で、最も顕著な3千メートル峰であったからだろう。
また荒川岳とも称された。三峰川上流の一支流南荒川が、この山から発しているからである。しかし荒川岳という名前も、同じ山脈上に別にあるのでまぎらわしい。そこで間ノ岳も荒川岳も大正初年に廃されて、以後もっぱら塩見岳が用いられるようになった。しかし塩見岳という名は新しい発明ではなく、ずっと古くから山麓には存していた。
武田久吉博士の古い文章に「塩見ヶ岳なる名称に就て」というのがある。それによると、山麓大鹿村の伝説では、大昔健御名方ノ命がこの地通過の折、鹿塩の谷で塩を見られたので、その谷(塩川)の頭にある山が塩見岳と名づけられたのだという。しかし武田博士も言われる通り、塩川の頭にあるのは本谷山であって、谷から塩見岳は見えない。またこんな一説も挙げられている。大鹿村の猟師の話によると、昔山麓の土民が塩がなくて困った。すると弘法大師が山へ登り、山頂から海を望んで、その塩をこの谷へ呼んだので、山名を塩見岳としたという。しかしこれも、弘法大師がこの地へ来たという証拠もなく、また山頂から海は見えない。
塩見岳という名は、おそらく山麓の名前と関係があるのだろう。鹿塩川沿いには、大塩、小塩、塩原などという部落があり、その中心地は鹿塩である。鹿塩から塩川に沿って少し上った所に塩湯という食塩鉱泉がある。その含有量は1リットル中に25グラム(海水は30グラム)わが国最高の強食塩泉だそうである。昔はこの地方で食塩の製造が行われたというが、この奥深い山中で、海の塩より山の塩に頼ったのは、まるで日本のチベットのような土地である。 (後略)
※出典:深田久弥『日本百名山』(1964年新潮社刊)の朝日文庫版から再録

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電話:0265-39-1010
湯元 山塩館/大鹿村
1893(明治26)年に創業した「湯元 山塩館」は、鹿塩温泉で最も古い温泉宿。源泉の湯は、海水とほぼ同じ濃度の強食塩泉で、飲用すれば食欲を増進させる効能もある。自家農園で有機栽培した野菜のてんぷらや豆腐につける山塩は、源泉を煮詰めて作った自家製で、素材の滋味がより引き立つと評判。食事はコイの甘露煮、シカ肉の刺し身、冬のイノシシ鍋など地元の素材を使った品々が並ぶ。

内湯のみの風呂は、檜風呂と大鹿村の天然石を配した石風呂の二つで、男女が日ごとに入れ替わる。どちらの浴室も窓が大きく寝湯もあるので、ゆったりと山々の四季が楽しめる。慢性皮膚病やリウマチ性疾患などに効能がある。

| 所在地: | 長野県下伊那郡大鹿村鹿塩631 |
|---|---|
| 営業時間: | 外来入浴:10時30分〜13時30分(要問い合わせ) |
| 料金: | 1泊2食付1万650円〜、外来入浴700円 |
| 駐車場: | 30台 |
| 交通: | JR飯田線伊那大島駅から大河原行きバスで41分、鹿塩下車、徒歩10分 |
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電話:0265-39-2205
大鹿村中央構造線博物館/大鹿村
施設のほぼ真下を通る大断層「中央構造線」をテーマにした博物館。館内には、村内一円から採取した地質帯別の岩石標本や一帯の地形地質模型などが展示されている。また、1961(昭和36)年の伊那谷豪雨災害をはじめとする地滑り、崖崩れ、土砂災害についての記録もある。館外の岩石園には175点の岩石標本が並べられ、中央には中央構造線を示す白線が引かれている。隣接して、大鹿村の歴史民俗資料館「ろくべん館」がある。

| 所在地: | 長野県下伊那郡大鹿村大河原988 |
|---|---|
| 営業時間: | 9時30分〜16時30分 |
| 料金: | 500円(ろくべん館と共通) |
| 定休日: | 月曜、火曜(4〜11月の祝日は開館)、12月28日〜1月3日 |
| 駐車場: | 30台 |
| 交通: | JR飯田線伊那大島駅から大河原行きバスで53分、終点下車、徒歩5分 |
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電話:0265-39-2100
医王山福徳寺/大鹿村
医王山福徳寺は、大河原から塩見岳の鳥倉登山口へ向かう道沿いにひっそりと立つ、柿葺きの小さなお堂。簡素な建物だが、緩やかな曲線の屋根には都の寺院建築文化の薫りが漂う。
堂内には、平安時代の作とされる阿弥陀如来と薬師如来が安置されている。建立は平安後期と伝えられ、長野県内最古の木造建築物として、1950(昭和25)年に重要文化財に指定されている。

| 所在地: | 長野県下伊那郡大鹿村大河原上蔵 |
|---|---|
| 料金: | 見学自由 |
| 駐車場: | 10台 |
| 交通: | JR飯田線伊那大島駅から大河原行きバスで53分、終点下車、徒歩30分 |
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