聖岳という名前には誰しも引きつけられるだろう。何か崇高で清浄な山が空想される。たしかにその名に恥じぬ立派な山である。聖は聖でも、外国のsaintではなく、例えば高野聖のような意の聖が似つかわしい。
元をただすとそうではなかったらしい。大たい日本人は現実的・即物的であって、山の名なども、ありふれた物の形で現すか、分かり易い実際的な地形から採るのが大部分であって、洒落た文学的な名前はごく少ない。聖岳もその例に洩れない。大井川の上流からこの山へ沢が入っている。悪い沢の山腹をヘズって(トラヴァースして)行かねばならず、ヘズリ沢と呼ばれた。それがヒジリ沢と変わり、その源頭の山がヒジリ岳となったという説を、たしか冠松次郎さんの本で読んだおぼえがある。また一説には、その沢がヒジリながら(うねうねしながら)流れているので、ヒジリ沢の名が生じ、ヒジリ岳となったとも聞いた。
しかし聖岳に関しては、こんな語源など忘れてしまった方がいい。そして初めから聖岳という美しい気高い名があったことにしよう。
聖岳が何か世俗を脱した高潔な山のように思われるのは、その名前のせいだけではない。それは日本アルプス三千メートル峰として最南の僻遠の地にあり、容易に近づきがたいという印象からもきているのだろう。日本の高峰中で一番登山者の少ない山かもしれない。
私にとっても長い間とり残された山であった。強い憧れを持ちながら、アプローチが長いため登り損ねていた。一度は遠山川から易老岳に登り、そこから北へ向かって山稜伝いに行くつもりであったが、雨に降り続けられて仁田岳の手前で引き返さねばならなかった。一度は、今度は逆に赤石岳から南へ尾根を辿って行こうと志したが、それも都合によって別のコースにそれた。
登山の機会を逸すれば逸するほど、この聖者はますます私にとって尊い山になった。そしてついに縦走などという欲の深い計画をやめて、ただ聖岳だけを目標として出かけ、その頂上に立った。 (後略)
※出典:深田久弥『日本百名山』(1964年新潮社刊)の朝日文庫版から再録

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電話:054-260-2552
畑薙ロッジ/静岡市
大井川の上流、聖岳の登下山口である畑薙第一ダムの近くに立つ公共の宿・畑薙ロッジ。終戦直後、このダムを造るためにアメリカから招いた海外技術顧問団の技師が泊まった施設が宿の始まりだ。白樺の木立に囲まれた洋風の館内は、窓が大きく設けられた明るい空間。1階は食堂を兼ねたフロアやこぢんまりとした内湯、2階には2段ベッドが並ぶ客室などがある。フロアのテラスでは、木々の間から上河内岳や茶臼岳の他、3千メートル級の聖岳や赤石岳が望める。
地元の素材を生かした食事は、フキノトウやウドのてんぷら、焼きナスのほか、シカの刺し身やアマゴの塩焼きなど。また近くには、天然温泉の日帰り入浴施設・赤石温泉白樺荘がある

| 所在地: | 静岡県静岡市葵区田代1109-1 |
|---|---|
| 料金: | 1泊2食付5600円 |
| 駐車場: | 10台 |
| 交通: | JR東海道本線静岡駅から畑薙ロッジ行きバスで3時間15分、終点下車、徒歩3分 |
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電話:0260-36-2744
喫茶 かみ/飯田市
地元産の野菜や豆腐、肉などを使った食事メニューが充実している「喫茶 かみ」。人気メニューはこの店でしか味わえない「味噌カツ定食」で、ハチミツが練り込まれた信州みそのたれが、とんかつのうまみを引き立てると評判だ。「遠山ジンギス定食」(950円)や「豆腐コロッケ定食」(850円)のほか、近くのわき水でいれたコーヒー(370円)もおすすめ。店内には観光ガイドブックなどが置かれ、道を尋ねる観光客に丁寧に応じるマスターの人柄も魅力だ。

| 所在地: | 長野県飯田市上村中郷413-4 |
|---|---|
| 営業時間: | 11〜20時 |
| 定休日: | 月曜 |
| 駐車場: | 20台 |
| 交通: | JR飯田線飯田駅から和田行きバスで1時間1分、コミュニティー下車すぐ |
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電話:054-260-2430
井川メンパ/静岡市
静岡県の郷土工芸品に指定されている井川メンパ。天然檜の柾目薄板を曲げて桜の皮で縫い合わせた後、本漆で丹念に塗り上げたもので、保存性と保温性に優れ、山仕事の弁当箱として重宝された。現在では、自宅で工房を構える海野周一さんがただ一人、技術を受け継いでいる。大きさ、形状ともに3種類ずつあり、丸形が一般的で丈夫だ。
価格は丸形男ものが3千900円、女ものが3千700円、など。海野さんの自宅で販売している。

| 所在地: | 静岡県静岡市葵区井川971 |
|---|---|
| 営業時間: | 8〜17時(要連絡) |
| 駐車場: | 30台 |
| 交通: | JR東海道本線静岡駅から畑薙ロッジまたは畑薙第一ダム行きバスで2時間40分、井川本村下車すぐ |
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