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2011年2月19日朝日新聞夕刊紙面より
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【写真上】カシオ 左からカシオミニ(72年)、パーソナルミニ(74年)、手帳サイズ電卓(75年)、薄型名刺サイズ電卓(78年)
【写真下】シャープ 奥が電卓1号機(64年)、下が左から液晶第1号(73年)、ボタンなし電卓(77年)、太陽電池搭載の超薄型電卓(81年)

カシオ計算機の電卓カシオミニの価格が1万2800円に決まったのは、1972年8月2日の発表当日だった。報道資料には価格だけがゴム印でおされていた。

8桁表示電卓が3万円以上した当時、6桁ながら3分の1近い価格は衝撃だった。月産1万台がヒットの時代に10万台のハイペースで2年近く売れ続けた。「6桁なんか電卓じゃない、おもちゃだ」と冷ややかだったライバルの中には、あまりの売れ行きに翌年5月から同規格・同価格で追随した会社もあった。カシオはミニシリーズを2年で半額以下に下げ価格競争を主導、電卓首位の座を勝ち取った。

開発が始まった71年秋はボウリングが大ブーム。「得点計算が面倒。4桁電卓なら1万円でできないか」と当時生産本部長の樫尾幸雄副社長は考えた。一課に1台から一家に1台へ。個人が電卓を買う気持ちになる価格を1万円と見込み、それで売り出せる性能をはじき出したところ、6桁なら実現できそうだった。家庭内で計算するなら100万円未満で用が足りると判断、社内でも秘密裏に開発を始めた。

6桁に減らし小数点以下は表示せず回路を節約、3割を占めるキーボードのコストを新方式で20分の1に抑え、月産10万台を前提に部品を発注し量産効果を出すなどして「1万円で十分もうかる機種になった」(樫尾副社長)。

集積回路(IC)の低価格化を背景に、東芝、三洋、日立、ソニー、オムロン、キヤノン……、大手の電機・事務機メーカーはこぞって参入していた。69年末に9万9800円、71年4月4万9800円、72年5月3万9800円。主要メーカーの8桁電卓の最低価格の動きだ。カシオミニが出現する前から「体感としては半年で半値になる」(浅田篤・元シャープ副社長)価格競争が続いていた。

あのとき

背景に集積回路の進化

計算回路にすべてトランジスタを使った世界初の電子式卓上計算機(電卓)をシャープが1964年3月に発売。重さ25キロ、価格は乗用車並みの53万5千円。従来の電動機械式より高速で静かだった。

1号機の部品は5200個。トランジスタや抵抗器、コンデンサー、配線のすべてをシリコンチップの中に作り込む集積回路(IC)の進化で部品数が劇的に減り、一気に安価・小型軽量に。69年に4チップ、71年に1チップの電卓が登場。

ICや表示装置などの部品を買えば容易に組み立てられたことから参入が相次ぎ、69年ごろから電卓戦争と呼ばれた。累計で55社が参入したという。激烈な低価格競争で撤退が続出、厚さ約5ミリの手帳大の電卓が出た70年代後半には数社の寡占状態となった。

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