
今回の旅は名づけるなら、「空に近い鉄道に乗って、宇宙を体験」。「スケッチブック」の最寄り駅・清里(山梨県北杜市)は標高1275メートル。同駅を含むJR小海線の甲斐小泉から海尻までの8駅は、JR線の駅の標高ベスト8に名を連ね、いずれも1000メートル以上だ。「八ケ岳高原線」との愛称で呼ばれ、車窓からは富士山や八ケ岳、南アルプスが望める。
小海線では8月から、営業用の鉄道車両としては世界初のハイブリッド車両「こうみ」が運行している。ディーゼルエンジンで発電した電気と蓄電池の電気を効率的に使って走る。11月の運行は、日に上下各4本。やはり、乗らなくてはならない。
午前10時24分、佐久平発の上り。銀の車体が、青と黄に塗り分けられた可愛い列車だ。思ったより静かに走る。車窓から見る、紅・黄のまだら模様に色づいた山腹が美しかった。

清里の隣、野辺山(長野県南牧村)は標高1346メートルで、JR線で標高日本一の駅だ。駅から2キロのあたりに、国立天文台の宇宙電波観測所と太陽電波観測所があり、ますます、空への近さを感じる。これらの施設は、年末年始以外は見学できる。
国立天文台・野辺山観測所に、レンタサイクルで向かった。駅からも見えていた直径45メートルの電波望遠鏡の白いパラボラアンテナは、まさに巨大。天体からのかすかな電波信号を集め、ブラックホールや星間物質の発見につながった。観測に支障が出る可能性があるというので、携帯電話の電源を切った。
敷地内には、大小101台のパラボラアンテナが並び、壮観だ。6台のミリ波干渉計は、直径10メートル。84台ある電波へリオグラフは太陽専門で、直径80センチ。見学コースにある不思議な形のものは、この夏復元された電波望遠鏡。東京・三鷹の天文台で半世紀以上前の49年、太陽観測に使われたものを再現した。
最後に、標高1375メートのJR最高地点へ向かった。野辺山駅から清里に向かって2.5キロほど進んだ踏切の脇に、「JR鉄道最高地点」の標柱と石碑がある。05年にはレールをご神体、小海線を走っていた蒸気機関車「C56」の車輪をシンボルにした「鉄道最高地点神社」も誕生。ご利益がありそうで、そっと願をかけた。
清里高原、大泉高原、東麓の野辺山高原など一帯のペンションは、それぞれ個性豊かだ。天体観測の機材や時間帯、音楽ホールなどの設備、アットホームな雰囲気、ロケーション、料理が自慢……。

「スケッチブック」のホームページには、中口さんが膨大な書き込みをしている。「どんな偏屈じいさんが出てくるかと怖いもの見たさで来た、というお客さんもいます」と中口さん。実は私も少しどきどきした。
天体観測に重点を置いたペンションでは、夜中に星を見る人が少なくない。ほかの部屋の扉の開閉音も聞こえる。「ちょっと優雅な共同生活だ」と意識するのが、楽しむコツだと思った。

初日は東京駅から、長野新幹線「あさま」に乗り、佐久平駅で小海線に乗り換え。小海線で約1時間半、20駅目の野辺山駅で下車し散策。隣の清里駅からペンション「スケッチブック」は、迎えの車で5分。
2日目は清里駅から、小海線で3駅目の小淵沢駅へ。新宿行き特急あずさに乗る。東京都区内を始点・終点に、左回りの一筆書きルートにした。
東京都区内−長野新幹線・佐久平・小海線・中央本線経由−東京都区内運賃6620円、東京−佐久平・新幹線自由席2720円。小淵沢−新宿・特急自由席2100円。


(更新日:2007年11月21日)
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