
高崎駅(群馬県)で新幹線を降り、信越線に乗り換える。かつては新潟駅までをつないだ大動脈も、新幹線開業後2つに分断されて、目的地の終点までわずか7駅。
ホームに滑り込んで来たのは2両編成の107系電車だった。時刻によっては、旧国鉄車両でボックスシートの115系に乗って旅気分が味わえたのに……、残念。松井田駅を過ぎたあたりから田園風景が一変、眼下に谷が見える。
終点の横川駅は、すっかり山の中だった。小さな駅舎だが、ホームは250メートルと長い。往時は国鉄・JRでもっとも急勾配の碓氷峠を越えるため、ここで補助機関車を連結した。その間、どの列車も長時間止まるので、ホームは有名な釜飯を買い求める乗客たちでにぎわった。そのホームの端っこに、降りたばかりの電車がちょこんと止まっている様は、悲しげでもある。駅前には「峠の釜めし・おぎのや」本店がある。

今回のお目当ては、駅から歩いて5分の「碓氷峠鉄道文化むら」。信越線・横川―軽井沢駅間が廃止された後、横川運転区跡地に99年4月にオープンしたJR鉄道テーマパークだ。園内には、おなじみの蒸気機関車D51をはじめ、首都圏近郊の非電化区間を走っていたキハ20や35などの一般気動車、食堂車、寝台車など、約30両が保存展示されている。急坂を登るため歯車のような車輪を使うアプト式で運行された電気機関車ED42もある。資料館では、碓氷峠周辺の風景を模したジオラマ模型を見ることもできる。
しかし、文化むらの目玉は何といっても、本物の電気機関車の運転体験だ。運転するには、ここで講習を受けて修了試験に合格する必要がある。
初日の講習は午前10時に始まった。10人が緊張した面持ちで席についている。夫婦で参加したという女性1人を除いて全員男性で、ほとんどが20〜40代だ。25歳の私鉄駅員もいる。最高齢は63歳。
午前中に計1時間半の講義。最初は、高橋寛館長(57)が横川―軽井沢間の歴史を話した。冒頭、「試験に出るところは2度繰り返すので、マークするように」と優しいアドバイスがあった。繰り返された部分は、夢中でテキストに線を引いた。
2コマ目は、横川機関区電気機関士として実際にEF63を運転していた佐藤昇指導員(64)による「機関車の概要と走る仕組み」。この講義も「バーニヤ」「ハイビー」など、初めて聞く言葉ばかりでチンプンカンプン。「ここで聞いてもおそらく分からないと思うから、あとは実際に機関車での講習で覚えてください」という佐藤指導員の言葉に救われるが、不安は募る。
午後は運転方法のビデオを30分見た後、2時間の運転予備講習。63年製造の電気機関車EF63・11号機の運転台に乗り込んだ。6人が乗ると、ほとんど身動き出来ない。受講生全員が交代で運転席に座り、始動前点検方法やチェック項目を教わる。午前中の座学と、実際にやってみるのとは大違いだ。点検を終え、交代で1往復を少しずつ動かしてみる。

最後は修了テスト。100点満点で60点以上が合格ラインだ。追試もあるというが、やはり一回で合格したい。下線を引いた部分や、佐藤指導員が最後に質問したことだけにヤマをはった。全員が無事合格した。
11月下旬のこと、講習を終えると辺りは暗くなり始めていた。いよいよ明日は運転体験だ。喜びと不安を胸に、文化むらがあっせんしてくれた高崎市内の宿に向かった。希望者には宿泊施設をあっせんしてくれるので、予約時に相談するといいだろう。

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