有本香さんと中国茶の出合いはいつだったのだろうか。

「80年代の終わりに台北の茶藝館で香り高い凍頂烏龍茶を飲んだことが中国茶との出合いです。そして、90年代初めに香港で武夷岩(ぶいがん)茶を味わったときは、すごい、こんなものがあるのか……、と衝撃を受けましたね。台湾系の烏龍茶をシャンパンにたとえるとしたら、武夷岩茶はコニャックといった感じ。上質なコニャックを飲むとぶどう畑が見えるような感じがしますが、武夷岩茶もまさしくそういう印象でした。お茶の木のエッセンスを煎じつめたらこうなるのかなといった、非常に力強い深い味わいだったのです。当時は、銘茶は香港に集まり、一番いいお茶は香港にあって中国国内にはないという時代でした」
同じころ、シンガポールでも心に残る中国茶との出合いがあったと言う有本さん。
「街を歩いていて偶然見つけたお茶屋さんで安渓(あんけい)鉄観音というお茶を飲んだのです。このお茶は、すでに台湾の影響を受けており、非常に軽く、花の香りが頭の中まで広がってくるようなすばらしいものでした」
香港とシンガポールでめぐり合った2種類のお茶からは、中国茶の持つ多様性が感じられたと有本さんは言う。この後、お茶をテーマにした旅が始まる。現在までに中国と、台湾をはじめ、マレーシア、タイなどアジア各国を訪れてきた有本さんだが、忘れられないお茶はどこの何というお茶なのだろうか。
「特に印象深かったのは、中国、華南地方にある広東省の汕頭(スワトウ)近くに位置する潮洲(ちょうしゅう)です。私は潮州料理が好きでかねてから潮州に行きたいと思っていました。潮州の鳳凰山で採れる烏龍茶に鳳凰単●(ほうおうたんそう)というのがあります。これがマスカットや桃のようなフルーツ系の香りのするなかなか魅力的なお茶なのです」と有本さん。有本さんのお茶をめぐる旅は、このように大きく広がっていく。
※「●」は「木ヘンに叢」
(更新日:2006年08月29日)
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