
坂本 徹(さかもと・とおる)
桐朋学園大学古楽器科卒業後、ヨーロッパに留学。1993年ブルージュ国際古楽コンクールアンサンブル部門優勝。古典クラリネット奏者・指揮者として活躍中。また、楽器製作者でもあり、使用する楽器はすべて自作。


ヨーロッパで音楽を鑑賞するのにおすすめの場所について、「建物」という観点から坂本さんに聞いてみた。
「ヨーロッパでは、もともと別の目的で建てられた建物が、コンサート会場として利用されているケースも少なくありません。例えば、私が留学していたスイス・バーゼルの中心部にあるシュタット・カジノというホールは、1826年に催しもののために建てられたのですが、響きがいいため、現在はクラシック・コンサートに利用されています。私はここでの演奏経験はありませんが、師匠の演奏会をよく聴きにいきました。このホールでおもしろいのは、お客様用のトイレと出演者用のトイレの区別がないこと。私は残念ながら経験がありませんが、友人はコンサートを聴きに行って、現在、NHK交響楽団の音楽監督を務めているアシュケナージ氏と、トイレではち合わせしたそうです。もしかしたら、高名な音楽家と遭遇するかもしれません」


元はといえば、王侯貴族の住居である宮殿や城も演奏会場として使われている。オーストリアは特に盛んで、ウィーンのシェーンブルン宮殿やザルツブルグのホーエンザルツブルグ城などの観光スポットでは、観光客向けに、頻繁に短い演奏会が開かれているが、なかには本格的なコンサート会場として活用されている宮殿もあるという。
「ドイツのシュツットガルトにある新宮殿(ノイエス・シュロス)の「白の間」(バイサー・ザール)は、宮殿の大広間ですが、400人ほどの座席数の室内楽用のホールとして利用されていて、私もここで演奏をしたことがあります。昼間のコンサートだったのですが、たくさんの窓から差し込む自然光で、白い壁がいっそう美しく輝いていたのが印象に残っています。宮殿は外観も室内装飾も建設当時の美の集大成ともいえる建物。そういうところで一流のプロによる本格的なクラシック音楽を聴けば、当時の王侯貴族の気分に浸れます。歴史ある建物の雰囲気や、その建物ならではの響きを、音楽と一緒に味わってみてほしいですね」と、坂本さん。
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