
ヨーロッパの音楽の歴史は、キリスト教文化と切り離せない。モーツァルトもザルツブルグ時代は領主でもある大司教の命を受け、多数の教会音楽を作曲しているし、ハイドンやシューベルトはウィーンのシュテファン教会の聖歌隊寄宿学校で音楽教育を受けた。
「ザルツブルグの大聖堂やシュテファン教会は、彼らが活躍していた当時の姿を今に残しています。どんな思いで彼らは生き、音楽を作り、演奏したのだろうか? そんなことを想像しながら、教会で音楽を聴くと、遠い昔の音楽家を、とても身近に感じることができるのです」と坂本さんは言う。
「それから、私のおすすめはベルギーの教会。説教台に上がる階段の手すり、祭壇の前のイスなど、ちょっとしたところの木彫り細工が見事なのが、ベルギーの教会の特徴ですが、木の温もりや昔の職人の技術と信仰心を感じることができます。特にゲントの聖バーフ大聖堂はすばらしいですね。この教会の所蔵するファン・アイク兄弟の祭壇画『神秘の仔羊』も大好きで、オランダ留学時代を含め、これまでに10回以上見ています。本当に、何度見ても飽きることはありません。当時のフランドル絵画は工房による完全な分業制で、宝石を描く人、布を描く人、木々を描く人などそれぞれの専門家の技術を結集して描きあげたのです。まさにファン・アイクを指揮者とする絵画のオーケストラといえるでしょう。何百年を経ても少しも古びず、むしろ新鮮な感動を与えてくれる絵は、モーツァルトの音楽にも通じるところがあります」
なお、教会への入場は無料だが、この絵がある部屋への入場は有料(3ユーロ)。
さらに、教会で音楽を体感する方法について教えてもらった。
「ヨーロッパで日曜日に教会を訪れ、ミサ(カトリック)や礼拝(プロテスタント)に参加してみてはいかがでしょう。信者でなくても大丈夫です。教会の祈りと音楽は切り離せません。プロが演奏するとは限らないので演奏のレベルとしてはまちまちですが、身体にずっしり響き渡るような、パイプオルガンの音色や、聖歌隊のやわらかなハーモニー、そして人々の祈りの声に、心が洗い流されていくような体験ができると思います」
加えて、こんなアドバイスも。
「教会に行くときは、華美な服装は慎みましょう。信仰の場であることを忘れずに、信者の皆さんの、宗教的な行事にお邪魔しているという意識を持っていただければと思います」
(更新日:2006年09月27日)
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