
ヨーロッパでは音楽は生活に密着していると坂本さんは言う。
「クラシック音楽が嫌いな人ももちろんいますが、ロックもジャズもポップスも、そしてクラシックも、分け隔てなく聴く人が多いように思います。スイスでもオランダでもそうだったので、多分、ヨーロッパの他の国でも同じだと思うのですが、音楽学校の学生の試験は一般に公開されていて、街の人たちに人気があるのです。ことに卒業試験は、あくまでも噂ですが、集客も評価の対象になり、学校としても、いかにお客様を楽しませる演奏をするか、に主眼を置いているように思います。これは日本とは大きく異なるところです。私のオランダの学校の卒業試験では、モーツァルトの室内楽とヨハン・シュターミッツのクラリネット協奏曲をやったのですが、演目がよかったのか、平日の午前中にも関わらず、友達半分、街の人半分で40人ほどのお客様を集めることができました。卒業試験は無料で聞けるとあって、学生のうちからプロとして活躍していた学友などは、200人近くも集客していました。いい演奏をすればとても大きな、あたたかい拍手が来る。これは、一般の演奏会も同じです。ただし、一般の演奏会はお金を払っていることもあり、お客様の納得のいかない演奏についてはブーイングも起こります。ヨーロッパの人たちは、基本的に音楽を楽しもうという気持ちが強いので、演奏家も、この人たちに楽しんでもらいたい、という気持ちをかきたてられます。それが相乗効果となって、いい演奏が生まれるような気がします」
演奏に感動したら、その感動を大きな拍手で表現するのが、ヨーロッパ流のマナーです。
「私がこれまで受けた拍手のなかでもっとも大きかったのは、ブルージュの国際音楽コンクールの本選でした。予選のときから常にお客様は満席。彼らは、フレッシュな才能に立ち会うことができる音楽コンクールを、とても楽しみにしているのです」
もう一つ、こんなアドバイスを坂本さんから。
「演奏家に投げかけるかけ声には注意してください。ブラボーは日本流ですが、正確にはブラーボです。ちなみに女性に対してはブラーバ、複数の演奏者に対してはブラービとなります。最高!というのはブラビッシモ!となります。歌舞伎の大向こうに似ていますね。これらのかけ声は、もともとイタリア語ですが、今ではブラーボは英語の辞書にも載っている国際語となっています。もっとも、歌舞伎と同じで慣れないとかけ声をかけるタイミングが難しいので、いい演奏に対しては、いつもよりも数倍大きな拍手をしてあげればじゅうぶんだと思います」

(更新日:2006年10月11日)
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