
陣内 秀信(じんない・ひでのぶ)
1947年福岡県生まれ。法政大学工学部教授。東京大学大学院工学系研究科修了。1973年、イタリア政府給費留学生としてヴェネツィア建築大学に留学後、ユネスコのローマ・センターで研修。パレルモ大学契約教授、トレント大学契約教授、ローマ大学契約教授などを歴任した。著書に「ヴェネツィア 水上の迷宮都市」(角川書店)、「イタリア 小さなまちの底力」(講談社)ほか多数。


世界遺産に登録されているような旧市街をはじめ、地中海世界の都市はどのような状況にあるのだろうか。
「ヨーロッパの地中海世界では、スクラップ・アンド・ビルドではなく、古い建物を丁寧に使って修復し、現代の感覚に合わせてリノベーションするということは、歴史上ずっとやってきました。たとえば、ヴェネツィア近くにある漁村とレース編みの村、ブラーノ島には、古い建物の外側にカラフルに色を塗った非常にかわいい家が並んでおり、中世以来の古い町並みをほぼ完璧に保っていますが、内部は大きく変わっています。もともと住民は漁師でしたが、今は水上バスが使えるので近くのヴェネツィア・ガラスで知られるムラーノ島やヴェネツィアのホテルなど観光産業に従事できるようになりました。そうすると島はベッドタウンとして成り立つようになり、今は漁業やレース編みはホビーとしてやっています。彼らの住む古い家はピクチュアレスクなので重要な観光資源です。外観は中世的な小さい素朴な家ですが、内部は青山あたりにあるインテリアショップのショールームみたいにモダンでとても洗練されています。」
世界遺産の都市空間、生活空間というのは歴史がそのまま止まってしまったようなノスタルジックなもので、それが観光の目玉となっていると理解するととんでもない誤解なのだ。
「世界遺産であっても現代の生活の場であり経済の場であり、プライドやアイデンティティーを持ちながら先へ進んでいるのです。世界遺産に登録されたことを励みとして21世紀型の都市作りを実施している町が多いように思います」と陣内さんは分析してくれた。
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