
櫻井 寛(さくらい・かん)
鉄道ジャーナリスト。1954年、長野県生まれ。小学生のころ、「鉄道はどこでも行ける魔法の乗り物」と鉄道員にあこがれる。日本全国を旅するうち、鉄道写真の虜(とりこ)となり、写真家をめざす。日大芸術学部卒業後、世界文化社写真部を経て1990年独立。「オリエント急行の旅」(世界文化社)ほか著書多数。

山と森と湖を縫って走るスイスの鉄道。かなりの高所にも鉄道が走っている。
「最も高い位置にある駅は、ユングフラウヨッホ駅で標高3454メートルです。これは富士山の8合5勺(しゃく)に匹敵する高度。日本ではこれだけ高い位置まで登れるのは、登山を趣味としている人など健脚な人に限られます。ところがスイスの場合、登山電車で気軽に到達できるのです。しかもスイスの鉄道は、バリアフリーが徹底しており、車いすにも対応しています。つまりハンディキャッパーもお年寄りも、誰もが山頂からの眺望を満喫できるのです」と櫻井さん。


スイスの鉄道の大部分は、少なくとも1時間おきに運行していることもあり、いつ乗っても、混雑していて座れないということがほとんどないという。常にある程度の余裕をもって走らせているということは、鉄道会社にとっては経営上大変なことだろうが、利用する側にとってはありがたい。


「4千メートルを超える山々を抱えるアルプスの国で、これほどの鉄道網をつくるのは、非常に苦労したことだろうと思います。高山病の症状が出るような高所で鉄道工事をし、トンネルを掘った人たちがいるということですからね。そこには、やはりスイス人がこのすばらしい眺望をたくさんの人たちに見せてあげたいという気持ちがあったからではないかと僕は思います。通常、登山家以外は見ることができない世界を、万人に見せてあげたいという、並々ならぬエネルギーを感じますね」と櫻井さんは語る。
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