
辻 啓一(つじ・けいいち)
1948年生まれ。一橋大学卒業後、ロータリー財団給費留学生としてフランス・グルノーブル大学に留学。77年、日本企業の駐在員として再渡仏し、以来フランスに在住。フランス写真家協会会員。著書に『パリの通りの物語』(中央公論新社)『フランスの「美しい村」を訪ねて』(角川新書)など。


パリだけではフランスの魅力は語れない。最近では、フランスの地方を巡る旅が人気のようだ。フランスに移り住んで31年目。雑誌や書籍などの撮影の旅を通して、地方都市から小さな村まで歩いている辻さんに、パリから気軽に行けるどらく世代におすすめの場所について聞いてみた。
「パリ・サン・ラザール駅から約1時間15分。セーヌ川流域にあるルーアンは、ノルマンディー公国の首都として栄華を極めた都市です。15世紀半ば、ジャンヌダルクが宗教裁判で魔女とされ、火あぶりになった歴史は有名ですが、そのときの裁判官が泊まったという古い旅籠が、今でも『ラ・クロンヌ』というレストランになって残されています。処刑されたヴィユ・マルシェ(古市場)広場から大聖堂へと通じる目抜き通りには、14〜17世紀につくられた中世の木組みの民家が立ち並び、目を奪われます。1階はカフェやブティックに改装されにぎわっていますよ」と辻さん。
さらに、ルーアンのノートルダム大聖堂は、フランス・ゴシック最高建築のひとつといわれている。19世紀には印象派の巨匠モネが30点以上もの作品を描いたことでも有名だ。
「遠景でノートルダム大聖堂を撮影するなら、町より下流のセーヌ川の商業港からの眺めが、なかなか素敵です」と辻さん。加えて、「セーヌ川右岸の東南にあるサント・カトリーヌの丘に上ると、ルーアンの街が一望でき、街を見下ろす壮大なパノラマが楽しめます。おすすめの時間はやはり朝方か夕方。斜めに差し込む陽の光が町の風景に陰影を与え、写真に立体感が増します」


また、この近郊に辻さんのお気に入りの村があるという。
「ルーアンの東にあるリヨンス・ラ・フォレは、ヨーロッパ最大のブナの森に囲まれた村です。この村には、ノルマンディー地方でよく見られる木組みを壁面に浮き立たせた造りが多く、美しい町並みを堪能できます」
『ボレロ』で有名な作曲家のラヴェルはこの村をこよなく愛し、この地にしばしば滞在し『クープランの墓』を作曲したという話でも知られている。
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