タイでは生活の中に仏教が深く根づいており、「タンブン」といって、お寺や托鉢僧に供養をすることが日常的な風景になっている。「タンブン」とは功徳を積むという意味だ。
「誕生日などの節目はもちろん、テストの点が悪かったり、先生に怒られたりしたときなども、タンブンをします。みんな行きつけのお寺があって、友だちから喫茶店にでも行くように、お寺に行こうよ、と誘われます。お寺や僧に対する敬虔(けいけん)な気持ちをもちながらも、現世利益的なところもタイ人らしいですね。彼らは新車を買ったときも、お寺で清めてもらいます」
もう一つ、タイ人の精神的なバックボーンとなっているのが国王だ。タイの歴代国王は国民から深く敬愛されているが、現プミポン国王(ラーマ9世)は、とくに庶民的な人柄で人気が高い。
タイでの王様人気は、アイドル顔負けだという。「恐れ多い存在というよりは、温かいお父さんといった感じで、国民は親しみをもっています。いすゞショーの最後には必ず国王賛歌の歌が流れ、全員起立するのですが、そのときは胸に熱いものが込み上げてきます」
仏教や王室によって培われてきた寛容で礼儀正しいタイ人の美徳も、西欧化、近代化が急速に進むバンコクでは失われつつあると聞く。交通渋滞が激しく、人込みあふれるバンコクの中心街では、人々の表情から笑顔が薄れつつある気もする。
そんな現代都市・バンコクを、河野さんは多忙な時間を割いて歩くようにしている。よく行くのが、タイの原宿ともいえるサイアム・スクエア。しゃれたブティックやショップが並ぶ若者の街で、とくに東南アジア最大級のショッピングセンターといわれるサイアム・パラゴンには頻繁に足を運ぶという。最先端のインターネットカフェや、インテリアセンス抜群のショップが入ったこのスポットは、まさにバンコクの今を象徴する場所の一つだ。
「バンコクの若者は情報感度が高く、新しい文化や流行を柔軟に採り入れます。あまり自分のスタイルに固執せず、変化を恐れません。東京以上に、最新の流行が広まるスピードは速いかもしれません。最近は西欧や新しいものに目が行き過ぎている気もしますが、仏教や王室によって培われてきたこの国の精神性は簡単には失われないでしょう。どんなに考え方やかたちが変わったものを採り入れても、バンコクがどんなに都市化しても、この国の本質は変わらない。これからも、世界のどこにもない魅力的な国であり続けると思います」
(文・写真 関川隆)
(更新日:2007年04月17日)
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