「風水によれば、僕が座る席は北向きがいいそうです。社長がこちらに座るのは、お客様としてはちょっと居心地が悪いようですが」
初対面となった会社の会議室で、小椋さんは日本でいう下座に腰を下ろした。取材中何度も口にした「相手の目線に合わせたい」という気持ちは、大きな仕事の前には商売の神様を祀る行天宮に詣でるなど、台湾の文化を尊重する姿勢にも表れている。

在任12年の間に台湾はめざましい発展を遂げた。地下鉄や道路が整備され、2007年は台湾高速鉄道(新幹線)も開通。暮らしは豊かになり、社会の状況も変化してきている。
「個人主義的な傾向の強い人たちだったのですが、社会貢献への興味も高まりつつあり、先日のチャリティコンサートは、台湾から14社も参加があったことで実現しました。」
電力プラント、台湾産品の輸出など同社が手がける品目は多岐にわたるが、今後は彼らの需要にあうぜいたく品やブランド価値が高い日本製品も扱えれば、と夢は広がる。
「多くの家庭が共働きで税金も安いため、可処分所得が高いんです。さらに彼らは、もうけたお金を積極的に投資していく。預金よりは、ハイリスクハイリターンな投資を選ぶ傾向がありますね」
台湾の人は元気と現金を持っている、と笑う。
顧客としてだけでなく、ビジネスパートナーとしても魅力的な人々だ。
台湾を漢字一文字で表すと、という質問に、小椋さんが最初に挙げた文字は「柔」。対応が柔軟で吸収が早く、国際性に優れた彼らを表現したという。しかしインタビューをすすめるうち、「雑」という文字が出てきた。
「雑多の『雑』、なんでもありなんです。失敗するときもあるんですが、トライ&エラーでやっていくのでスピード感がある。さらに、面子を重んじる前に一歩引くという融通性もある。厳しい社会状況が彼らの強さにつながっているのでしょう」

翌日、古い街並みが残るジウフェンの土産物街を散策した。お菓子、お土産、生活雑貨。古いものから新しいものまでごちゃごちゃに並びながら不思議と調和が取れ、全体の景観はむしろ美しい。一角の店で餅菓子を買い求めながら「なんでもあるでしょう。やっぱり『雑』だね」小椋さんはほほえんだ。
(文・写真 山田静)
(更新日:2007年05月05日)

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