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麗しロマン大陸 人ものがたり

私のかけがえのない時間 私のとっておきの「青島」よ!(後編)

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多趣味な人である。「好きな時間?音楽を聴きながらサイクリングしているときかな。ボサノバが青島の風景にあうんですよ」。

飛坂有三さん

1956年生まれの51歳。1980年三菱商事入社、1985年から87年まで韓国釜山事務所駐在、98年から2004年まで米国MitsubishiCement取締役としてカリフォルニア州に赴任。2005年8月より三菱商事(青島)有限公司社長として青島で活動中。

飛坂有三さん(51)が中国山東省の港湾都市・青島に単身赴任して2年が過ぎた。現地で購入したスポーツサイクルで海辺や散策路の変化に富んだ風景を走り抜けるのは休日の楽しみだ。もうひとつ、この地にきてからはまったものがある、それは農業。「土壌改良の試験栽培を家でしているうちに、気がついたら15鉢にもなっていました」

自宅のベッドルームにもリビングにも、窓際にはすらりと茎を伸ばしたトマトの鉢が並ぶ。ソファには土壌研究の本が置かれ、床にはハーブの鉢がずらり。赤く締まったトマトの実をひとくち噛むと、皮がぷちりとはじけ、強い甘味が口に広がった。われわれの反応を見て、飛坂さんは子供のように得意げだ。ほかにも料理や写真、スポーツと話題が豊富、どこにいても、なんでも楽しみに変えてしまう人なのだ。そんな飛坂さんの興味の幅をさらに広げているのが、青島という場所である。

2005年8月、パラリンピックを控えたこのタイミングで青島赴任が決まったとき、飛坂さんは「これはもう、やるしかない」と大きな縁を感じたという。

自慢のトマトやハーブに囲まれて

四半世紀前の80年、新入社員だった飛坂さんが担当したのは「履物」。その取引先が、青島市の国営工場だったのだ。低価格で手作業のよさが実現できる中国での生産に、日本の各業界が注目しはじめていた時代だ。だが、当時の中国は、「国際電話は4時間待ち、通信は電報で、しかも漢字を1文字ごとに4桁の数字に置き換える暗号文のような代物でした」。

万事に時間がかかる上に、職人の育成から始めたため、学校の上履きの最初のサンプルを完成させるまでに1年を要したという。中国との商売は大変だと世間ではいわれるが、当時のことを思えばなにほどのこともない、と笑って回想する。「履物の業務から離れた90年代初めに、日本の靴屋でその工場の上履きを見つけたことがあるんです。お願いして5サイズくらい見せてもらうと、どれもほれぼれするような出来栄えで」。

自転車で八大閣を駆け抜ける。サイクリストは珍しい存在

心からうれしそうに語る。ゴムバンドは金沢から取り寄せ、Made in Chinaの刻印はたがね屋に特注する。次々発生する問題をクリアし、よりよいものを作るために動き回り、ネットワークを広げていく。まさに成長を始めようとしていた当時の中国は、不便さと面白さがないまぜになったダイナミックな現場だった。

27年を経たいま、飛坂さんの目に現在の青島はどう映っているのだろう。「あまり違和感はありませんね。食事もおいしく、住みやすい場所です。経済的に豊かになったことで、まち並みや暮らし方こそ変わりましたが、人と人との付きあいは変わらないですよ」。じっくり考えた末に、答えが返ってきた。

「機械の刃を替えただけで生産率がぐんと上がる。リターンの大きさは魅力です」

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