彼の活動に賛同する人々も徐々に増えてきた。三菱商事ベトナム総代表・唐沢裕一さんもその一人。

「多くの人が辞めてしまうだろう状況の中で、医療支援活動を続けている先生に対し、尊敬の念と日本人の誇りを感じています」という気持が、昨年冬、実りを結ぶことになった。
ハノイ郊外の新興工業地帯に位置するビンフック総合病院は、服部さんが定期的に診療を行う病院の一つ。活動に賛同した三菱商事は、2006年12月、同病院に白内障手術用機器、手術用顕微鏡、手術用器具導入などに関する支援を行った。今回の訪問では、支援活動を担当した同社ハノイ事務所・所長代理の河内俊夫さん(37)とともに病院内を見学した。
大きく清潔な病院は一見日本と変わらないが、受付ではすげ笠をかぶった女性が薬をもらい、隣で子供が走り回る。廊下では足をぐるぐる巻きにされた男性が担架に乗ったまま周囲の患者と談笑している。ゆるやかな空気は、いかにもアジアらしい。
服部さんの手術件数が多いのは、人手や技術の問題もあるが、ベトナムにおける眼病の多さも示している。病院不足や貧しさ、そして機器の乏しさなどで早期発見、早期治療が難しいのが大きな原因だ。とりわけ症例が多い白内障治療の最新機器が導入されたのは大きな出来事だった。
院内を案内しながら、病院長は途中で足を止めては河内さんに説明している。どうやら別の新しい機器の必要性を訴えているようだ。河内さんはひとつひとつに柔らかい笑顔でうなずく。「正直な人たちですよね。遠慮がちだけど、言いたいことは言う」。

2年の語学留学、5年の駐在経験を経た河内さ んは、語学も堪能なベトナム通。日本人からすると積極的に過ぎるようなベトナム流のお願い事も、当然のことと受けとめ、その中で最善のことをしたいと真剣に考えているようだ。
「服部先生のように技術があれば、本当は僕も個人としても貢献したいです」
今回の支援活動について、河内さんはこんな感想をもらした。お金や立場を気にしないのでいいのであれば、下水などを整備し、環境を整えてみたいとも思う。「そうすれば、病気も減るかなあと」。地域のためになっているのを実感できる活動を仕事の中で出来るのは、ベトナムに対して人一倍思い入れのある彼にはうれしいこと。一方、唐沢さんは、この支援を通じて「日越の関係をもっと太くしていきたいです」と語る。
ベトナムの若い力を育て、日本からは技術や技術者による支援を行う。目指すのは、日越の絆の深まりだ。「リタイヤした後には、自分が出来ることで何かベトナムにしてあげられたら」と言う河内さん。服部さんのまいた種、こんな所でも、小さな芽を出し始めているようだ。
(文・写真 山田静)
(更新日:2007年09月01日)

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