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麗しロマン大陸 人ものがたり

私のとっておきの「名古屋」よ!(後編)

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とにかく仲がいい。

「三菱商事アートシップ」の取材で三菱商事中部支社スタッフに会ったときの印象だ。

金井義邦さん

1968年三菱商事入社。97年10月米国三菱商事会社グループCOO(最高執行責任者)、00年4月燃料第一本部長、01年6月執行役員石油事業本部長、03年4月執行役員米国三菱商事会社EVP(Executive Vice President )を歴任後、05年4月常務執行役員中部支社長就任。

昼食にみそカツを食べたい、ともらすと、「じゃああのお店でしょう」「いやこっちでしょう」「君達はみそ味であればなんでもいいんだろう」

ひとりが話すとひとりが突っ込む、テンポのいい会話が続く。「つい先日も、部内旅行で大井川に行ったんですよ。」同社業務経理部長・矢田部一嘉さんが笑う。この雰囲気の良さは仕事での風通しの良さにもつながり、隣の人が何をやっているのか見えやすい、と互いを評価する。そんなスタッフを率いるのが、支社長の金井義邦さんだ。

「小倉トーストも忘れちゃいけませんね。トーストにあんこを挟んだものですが、口に入れるとアンパンなんですよ。」

まじめな表情でお気に入りのご当地グルメを語る金井さんは、スタッフからも「安心して(仕事をして)いられる」と評される謹厳実直な雰囲気の人だが、いったん話し出すと独特の愛敬とユーモアがあふれだす。そして、名古屋や中京地域の話題となると、その口調は熱を帯びてくる。「赴任するまでは、素通りしてしまいがちなまちだと感じていましたが、今は戦災でも失われなかったものや文化が多くあることを肌で感じます。」

金井さんの好物のひとつ・小倉トーストは名古屋式喫茶店メニューの代表格

東京は町人文化、大阪は商人文化、京都は公家文化が発展し、名古屋では武家文化が発展したと表現されることがある。金井さんが折りにふれて感じるのは、質実剛健で、しっかりとしたものづくり文化が息づく名古屋の文化。例えばそれは、日もちよりも味を重視した和菓子作りの世界だ。「暮らし始めたころ家の近くで大福を買い求めたのですが、『いつ食べるんだ』と聞かれ、当面必要な分しか売ってくれない。残りは明日また買いにきなさい、と。大変美味なのですが、全国区になりにくい理由はこれなんですね」

名古屋のシンボル、名古屋城。四季折々のたたずまいが楽しめる名城だ

金井さんが思う名古屋を表現する漢字は、「ひとつは、名古屋城のシンボルでもある『鯱(しゃち)』。そしてもうひとつは、『輝』。今の名古屋は鯱のように元気がよく、積極的で輝いています。」鯱のようにどうもうではないので、水族館の鯱かなあと冗談を交えながら続けた。

「(この地域は)ものづくりにかかわる企業、それを支える部品メーカー、さらにそのための部品メーカーなどが数多くあり、ひとつひとつの技術がトップクラスなんです。」

好奇心のおもむくまま各所へ出かける行動派・金井さんにとっては、この「輝き」は経験から得た実感だ。あるとき、経営に関する話を聞いてみたいと3百年の歴史を有する和菓子メーカー「赤福」の会長を訪ねたことがある。「そのときに、企業経営ではなく老舗経営を、という話が出ました。老舗経営とは何か、とうかがうと、『次の180年に、赤福がどうありたいか考えるべきだ』と。新しいものを入れる気持ちに、そういう考えが同居しているのだなと感じました。」

会いたい人に会い、見たいものを見るフットワークのよさは休日も同じこと。焼き物に興味が湧けば伊賀の土楽焼の職人を訪れ話を聞き、数多く開催される祭り見物も欠かさない。「8月は桑名の石取祭、郡上八幡の郡上おどり。10月にある半田の山車(だし)祭りは、5年に一度の開催なのでぜひ見てみたい。山車やからくり人形は、ものづくりの原点ともいえるのでは、と思っています。」

携帯電話の待受け画面には、桜を前景にした名古屋城、桑名の祭り、花火大会など、自ら撮影した季節感のある地元の風景を毎月入れ替えて使っている。園芸も趣味のひとつだが、「人がさじを投げたものを再生させるのが好き」と、わざわざ手のかかることを好んでいる。

責任ある役職で毎日の仕事は分刻みのスケジュール。そんな元気は、どこから来ているのだろう?「さあ、名古屋からもらっているんでしょうか。」毎日楽しくて忙しくて、とほほ笑んだ。

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