一方で、ロンドンのファッション事情は職業人としての本能を刺激してやまない。
「伝統のブランドが、昔ながらの造りを生かしながら新たな柄や素材に挑戦し、伝統の芯を残しながら挑戦を続けている。そんなところに、ロンドンの若いパワーを感じます」
ひとつの通りが全部紳士服の店舗だったり、同僚の男性のスーツがオーダーメードだったり。そんな地で仕事出来ることはやはり楽しく、機会を与えてくれた会社に感謝している、と素直に口にする。

英国を漢字で表現すると、「芯」だと言う。自身の柱を曲げない「芯」の強さだ。それを強く意識したのは、2005年7月・ロンドン同時爆破テロでの人々の反応。
「彼らの反応は『テロなんて気にしない。でも、腹がたつ』というもの。英国人を何だと思っているんだ、と。テロに屈しない姿勢は印象に残りました」
そんな彼らの「芯」は、英国の国花・バラにも似ていると言う。バラは美しいだけではない、うかつに触れるとトゲがある誇り高い花だ。
「表面は美しく裏にはトゲ、つまり芯がある。まさに英国紳士・英国貴婦人と、彼らが好きな皮肉っぽさを表現しているように思います。日本の桜とは大きく違いますね」
そんなトゲも含め、佐藤さんはこの国に愛着を持ち、この地で自分は変わったと感じている。彼女自身の「芯」はどんなものだろう?
「芯を持ちつつ、あるときはかぼそくしていくのが理想です。日本に戻り、上司から『何でも言っていいよ』と言われ何でも口にすると、あとで問題になったりすることがあって」
と笑った。
バラと桜、どちらの長所・短所もよく知る佐藤さん。思い描く将来の日英関係はどんなものだろうか?
「対等になるといいですね。今は、尊重しあってはいるものの違う次元にいて、腹を割って話していないように感じます。これに対して自分は何をやっていけるのか、考えて経験を生かしたいです。やはり、英国が大好きですから」
夢みていた服飾にかかわる業務につき、好きなロンドンに暮らす日々。
「今までのところ、夢や目標は達成できているように思います」
明るく語るが、インタビューも終わるころになり、
「実は、今、悩んでるんですよ」と、もらした。
「仕事は楽しく、会社から期待されていることも理解しそれに向かい努力しているつもりですが、キャリアを積んできたせいか、新入社員のときのような、冷や汗をかくような思いが減ったように思います。同僚と、これでいいのかなあ、なんて話すことも。今は次の目標を模索しているんです」
そろそろ結婚も気になるお年ごろ、同年代の在住日本人女性たちとの飲み会でもそんな話で盛り上がるというが、
「ただ、どんなことをしていても、変わらない自分でいたいです。仕事も続けていきたい。そして、後輩たちから、カッコイイ先輩、なんて思われていたいかな」
今もすでに後輩から「アネゴ」と呼ばれていると苦笑する佐藤さん。
仕事一色の働きマンはここロンドンの空気に触れ、しなやかで芯のある日本女性に脱皮しつつあるようだ。

(文・写真 山田静)
(更新日:2007年11月13日)
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