「彼はね、ダンスをすると人が変わるんですよ」
「真面目だけど、いざとなるとがんがん行きますよ。政府の偉い人にも平気で攻めていくタイプじゃないかな」
同僚たちのコメントがにわかには信じられないのは、アルフレッド・ウルダネータさん(43)のきまじめな態度、そして学校で見せた謹厳な教師っぷりからだ。常に手にしているPDA(携帯情報端末)に目を留めると、
「朝起きたらすぐ見てメールには返信、ランチタイムも手放しません。(会社から)これを持たされているのは僕を試すテストのようなものだと……」

アルフレッド・ウルダネータさん
1992年三菱商事入社の43歳。現在ベネズエラ三菱商事エネルギー部副部長、およびビジネス・デベロップメントチーフを勤めている。2003年よりジュニア・アチーブメントの活動に参加。
真面目な顔で冗談を飛ばす。入社15年、週に2回は日本食を口にするという彼は、日本人より日本の文化について理解が深いのでは、と同僚の日本人は彼を評した。
「日本の企業はとても規律正しく、効率がいい。何か決定するときに、ベネズエラの企業よりも保守的な結論を出すように感じることもあります。でもそれほど大きな違いはありませんし、お互いの市場の背景、つまり習慣や文化の違いを知れば理解できることです」
数多くの日本人と付き合ってきた間には、こんな出来事にも遭遇した。
「カラカス出身の男性をこちらの言葉でカラケーニョ、女性だとカラケーニャと呼びます。以前、ある日本人駐在員の家庭に娘さん、つまりカラケーニャが産まれました。彼らはその後すぐに日本に戻りましたが、数年後にその娘さんに会ったとき、本当に陽気でにぎやか、活発なんです。上のお子さん二人は日本人らしくもの静かなのに、彼女だけはカラケーニョとして育っていたんですね」

思い出したように笑みを浮かべた。陽気で温かい気質といわれるカラケーニャ、カラケーニョたちはその先祖にさまざまな民族の血が混じりあっている。先住民族、スペイン人、ポルトガル人、そしてアフリカの人々……。そんな彼らのルーツは、名前から見て取ることができる。
「ウルダネータは英雄の名前、僕の先祖です」
感心してうなずいていると、目が笑っている。建国の父、シモン・ボリーバルの右腕として19世紀初頭にスペインと戦ったラファエル・ウルダネータ将軍。その出身地はカラカスの西に位置するマラカイボで、彼の両親の故郷でもある。
ベネズエラの人々の多くは、2つの名前と2つの名字を持つという。その名前を見ることで、出身やルーツを想像することもできる。例えば彼のフルネームは、アルフレッド・ホセ・ウルダネータ・モンテロ。父と母の名前を組みあわせたもので、「ウルダネータ」は父親の名前だ。
「決まりは特にないんですよ。例えば、その日本人のカラケーニャは、日本人の名前に加えて、カラカスの山の名から『アビラ』という名前をとっていました」
父方の血にはフランスとスペインが交じる彼のルーツは、スペイン風の名前に表れている。

そんな家族にまつわる話をすると、きまじめな彼の顔は柔らかみを帯びてくる。
「この国は、家族のつながりはとても強いのです。自分は17歳で学校を卒業したとき、アメリカに行こうと考えていたのですが、両親から「まだ子供なのに」と怖がって止められました。今でも彼らからは「大丈夫?」「元気?」としょっちゅう聞かれますよ」
愛情豊かな家族に囲まれて育ったカラケーニョ。彼が子供たちの育成に深い関心を寄せる理由が、少し見えたような気がした。

「ピープル(人)、スペイン語で言うとラ・ヘンテ」
一言でベネズエラの魅力を、とお願いすると、こんな答えが返ってきた。
「漢字だと『明』。ユーモアがあって誰にもオープンでお互い尊重しあえる人々こそ、この国の魅力」
そう言えば、駐在の日本人からもこんな話を聞いた。

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