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麗しロマン大陸 人ものがたり

私のとっておきの「広州」よ!(前編)

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水牛が田んぼを歩き、あぜ道を子供が走り回る。遠くに見えるのは桂林にも似た小さな岩山群だ。

広州から車で4時間あまり、通過してきた工業地帯とは対照的なのどかな風景の中に現れた小さな建物が今日の目的地、「合水鎮三菱商事希望小学校」である。

張月華さん

大学時代から三菱商事(広州)で学生アルバイトとして働き、1999年7月 入社 人事総務、秘書、法務などを担当したのち、現在は人事総務業務部の副部長として、主に人事関連の業務に携わる。

中国の映画監督・張芸謀(チャン・イーモウ)に「あの子を探して」という作品がある。謝礼金目当てで田舎の小学校の留守番を引き受けた13歳の少女が、出稼ぎのため都会に行ってしまった生徒を探し奔走する物語。子供たちの素朴な奮闘ぶりが笑いと涙を誘い、ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得した。だが、背景に淡々と描かれているのは、中国が抱える深刻な教育問題である。地方都市での学校や教師の不足、金銭的な理由で学校に行けない子供たちの存在--。その打開策のひとつとして全国で展開されているのが、1989年にスタートした中国青少年発展基金会によるプロジェクト「希望工程」だ。

貧しい学生や地方都市を支援し、教育環境の改善を図るという主旨に賛同した三菱商事(広州)有限公司は、2002年から活動に参画している。合水鎮希望小学校は、同社が最初に支援した学校だ。

合水鎮希望小学校の新しい校舎は、2003年に完成した

「みんなー、張さんのこと、覚えてるー?」

「はーい!」

校長先生の声に、教室にいる子供たちが声を上げる。満面の笑みで答えるのは、プロジェクトの社内立ち上げから関わってきた張月華さん(30)だ。彼女がここを訪れるのはほぼ1年ぶり。記憶よりひと周り大きくなった子供たちに目を細め、以前も一緒に遊んだ折り紙を取り出して教え始めた。女の子たちは小箱や動物を、男の子たちは飛行機を作り始めたが、日本でいうと小学校5年生程度とわんぱく盛り、興味の対象はもっぱら張さんを始めとする来客たちだ。

折り紙を教える張さんの顔は子供たちよりうれしそうだ

「そのネックレスはどこで買うの?」

「今日は広州から来たの?」

あれこれ話しかけてくる子供たちの相手をしながら、内緒話でもしたのだろうか、耳に何かをささやく女の子を、張さんはぎゅっと抱きしめほおずりしている。

黎校長「校舎が新しくなり、ずいぶん便利になりました」

「最初に来たころには、靴を履いていない子供もいて、靴も寄付しました」

2002年当時を張さんは振り返る。1950年創立の同校には、合水鎮の子供たち177人が通っている。支援活動が開始されてから、古い校舎は新しくなり、文具やスポーツ器具が届けられ、貧しい家庭の子供には社員有志から学費の援助が行われた。黎興勝校長は、地方教育が抱える問題を指摘する。

「田舎の学校はどこも財政的に苦しい。また、教育に関する情報が入ってきにくい環境にあります」

全土の中でも比較的豊かとされる広東省、同校の経済状況は「全国的に見れば中級から少し下の水準くらい」(黎校長)というが、貧困問題や教師の不足はどこも深刻だという。地元の人が、こんな話を教えてくれた。

「ある地方の若い小学校教師が、絵を見せながら飛行機の説明をしたとき、生徒から『それで、人間はどこに乗るの?』と聞かれて困って、翼を指さしたんだそうですよ」

完成品を持って子供たちが張さんに駆け寄る

話の真偽は定かでないが、前述の映画に登場した13歳の少女教師のような子が実際にいても不思議はないという。

「がんばって勉強して、社会に貢献する人になってほしいですね」

折り紙に熱中する子供たちを見守りながら、黎校長は語った。

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