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麗しロマン大陸 たいむトラベラー

伝統と革新の「ロンドン」スタイル(前編)

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「おいしくなかったでしょう?」

ロンドンに行ってきた、と言うと、何人にもこう聞かれた。

「うーん、おいしいといえばおいしいけど……」

もごもごと答えると、相手は「やっぱりね」となぜか満足げ。

フィッシュ&チップスは基本のレストランメニュー

英国=食べ物がおいしくない。不名誉な風説がまかり通って久しいが、印象としては、あまりの美味に恍惚の表情を浮かべるほどではないが、非難されるほどまずい代物でもない。

「最近ようやく、食への関心が高まってきたように思います」

ロンドンに長く暮らす日本人は言った。本人たちはどうなのか、若いロンドンっ子に聞くと、

「フィッシュ&チップス? 時々食べたい。でも胸やけがするから、スシのほうがいいかな。味? どっちもどっちだな」

「紅茶はふだんあんまり飲まないよ。スターバックスのコーヒーがいちばんおいしい」

自国はもちろん、他国の食文化にもどん欲なアジア人からすると、この屈託のなさは不思議。まして、あれほど伝統にこだわりを見せる人々なのに。

トラッドな服装の着こなしは日本人には到底かなわない

「たとえばストライプのデザインはある程度決まっていますし、タートルネックの服はあまり受け入れられません」

服飾の業務にかかわる佐藤愛さんは、「英国で売るための」デザインについて教えてくれた。紳士淑女のお国柄、デザインの一つ一つに伝統が息づき、逸脱したものはあまり好まれないという。だが同時に、ここはパンクファッションやビートルズを生んだ革新の国。道行く人々の服装はみごとにばらばら、スーツ姿はほれぼれするほど格好よく、逆に「それで外を歩くの?」と言いたくなる思い切った取り合わせの人もいて、そのアンバランスは見ていて飽きない。伝統文化の厚みがあればあるほど反発する力も強く、革新を生み出すパワーが生まれる。それが、英国文化が常に世界の注目を浴びる理由のひとつだろう。その力の原動力となるのは、インタビューでも耳にした「自分の時間を大切にする」という姿勢。

公園でくつろぐひとときも欠かせない

「ヨーロッパでは、work to live(生きるために仕事をする)といいますが、極東ではlive to work(仕事のために生きる)といいますね」

雑談で、英国人はあまり残業をしない、という話題になり、当の英国人からこんな話が出た。仕事をさぼることはしないが、長くだらだら続けることはしない。

「会社のシステムの違いもあります。英国の会社では個人で決めてしまうことが多く、プロジェクトも上の決済を待たず、少人数で進行させます。だから会議も少ない」

たとえば、明日までにやっておいて、と言えば、日本人は徹夜してでも明朝に仕上げる。しかし英国人ならば、「無理です」と答え、そのあとは自分の時間だ。

パブの外は時間がたつにつれ混雑する

週末の夜、街角のパブに明かりが灯りはじめると、立ち飲みする人々がぽつぽつ現れる。夕方早めはトレンチコート姿のビジネスマンが多く、夜もふけるにつれおしゃれした若者たちも増えはじめる。大混雑のパブを横目にホテルに戻ると、入り口には、リムジンが横付けされドレスアップした女性が次々登場。手にした羽飾りからみると、どうやら今日は、仮面パーティ。これもまた、古き楽しき英国のお遊びだ。

ケンジントン宮殿を訪れる人はあとを絶たない

「命日の8月31日には、積み上げられた花束は腰に届くほどでしたよ」

晴天の中、ケンジントン宮殿を訪れた。ここはチャールズ皇太子と故・ダイアナ妃が暮らした場所。世界に愛された「イギリスのバラ」が命を落として今年で10年、生前はゴシップばかりが目立った彼女だが、時がたつにつれ、その人柄や慈善家としての活動を評価する声が大きくなり、追悼コンサートには6万人が詰めかけたという。伝統に屈することなく、自分の生き方を模索し続けた彼女の姿勢は、今回の取材を通じて知った英国人の姿そのもの。これほどまでに支持されている理由が、少しだけ分かったような気がした。

(文・写真 山田静)

(更新日:2007年11月03日)

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