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麗しロマン大陸 たいむトラベラー

コスモポリタン都市「リオデジャネイロ」(前編)

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「ここなら暮らしてみたい」

久しぶりに、本気でそんなことを思わせるまちに出会った。

10月の気温は日中で30度、汗ばむほどの陽気だが、からりと乾いた空気が暑さを感じさせない。人々の原色を生かした着こなしは、澄んだ空気に小憎らしいほど映えている。複雑で美しい海岸線、おいしい料理、サッカーにサンバ。リオデジャネイロは、やはり世界有数のリゾートだ。

色とりどりの服装、のびやかな空気。散歩するだけで解放感に浸れるのがリオのよさ

明るさばかりが印象に残るこのブラジル・サントス港に、1908年一隻の日本船・笠戸丸が到着した。このときの781人の乗客が、ブラジルの日本人移民第一陣である。

ハワイ、アメリカ、そして南米。明治維新以降、多くの日本人が夢を求め海を渡った。沖縄のお年寄りにこんな話を聞いたことがある。

「おじいが若いじぶんには、次男坊や三男坊は家を出て自分で食いぶちを稼ぐのが当たり前。となると、那覇でアメリカ(兵)相手に働くか、ハワイやブラジルに行くしかなかったさ」

入り江にはヨットが点在する。100年前にはどんな風景が広がっていたのだろう

アンデスの山越えや不毛な土地との格闘など、伝え聞く苦労話は無数にある。だが一方で日本人はしぶとく各地で生き延び、その証を残している。例えば若い女性に人気のブラジル産ビーチサンダル「ハワイアナス」の原形は、日本人の草履なのだ。現在ブラジルには140万人の日系人が暮らし、今は逆に30万人もの三世、四世たちが日本に出稼ぎにきている。彼らの母国への仕送りは年間約21億ドルにものぼるという。

丘陵地に広がるファベーラ。夜はブラジル人も近寄らないという

入り江と緑豊かな丘陵の風景は、リオデジャネイロの美観のひとつ。だがよく見ると、所々の丘陵にはへばりつくように赤茶色の屋根がひしめく。ここはリオデジャネイロだけでも全部で40万人が暮らすというファベーラ(スラム街)で、この斜面の景観もリオ名物。ある丘のふもとで車を止めると、

「あまり車から離れないでください」

同行したブラジル人女性がささやいた。少し離れたところで、こちらに視線を注ぐ男性がいる。この地では貧富の差は歴然とあり、「4万円くらいで6人家族を養う人も珍しくありませんよ」と在住の人は教えてくれた。

「でも、なんとか食べていけているんですよね。やっぱりどこかで豊かなんだと思います」

彼らにとって大きな息抜き、そして人生の目標となる「希望」が身近にあることも大きい。

トップクラスのダンサーによるサンバショー

底抜けに明るい笑顔、南国の鳥のような豪華な衣装、褐色の肌に汗が飛び散る。

サンバショーを見に行った。毎年2月ごろに開催されるリオのカーニバルは総勢数万人のチームが繰り出し腕を競い合う世界最大規模の祭典。上位を争うチームに参加するのは大変な栄誉で、ショーへの出演など表舞台に立つチャンスも開けてくる。同じショーで披露された足技中心の武術・カポエラもまた然り。さらに大きな夢は、もちろんサッカー選手になることだ。

「お金がなくてもできることがある、というのは、希望が残せますよね」

サンバはアフリカの太鼓や先住民族の音楽を組み合わせて生まれた。カポエラのルーツはアフリカ系移民の自己防衛武術。サッカーはイギリス人が19世紀に伝えた競技。こんなところにも、コスモポリタン都市の空気が流れている。

明るいビーチの向こうにはファベーラが広がる

訪問最後の日、コバカパーナに撮影に出向いた。砂浜と海にカメラを向け、構図を決める。背景に緑の丘陵を入れようとして、そこがファベーラであることに気がついた。赤い屋根が緑の丘に映え、むしろなかなか絵になる。

……まあ、これはこれでいいか。

カシャリとシャッターを切り、横を見ると地元っぽい女の子がにこにことこちらを見ている。砂遊びに誘っているらしい。やっぱり、いいなあ。百年前の移民たちも、リオならほっとできただろう。ふと、そんなことを思った。

(文・写真 山田静)

(更新日:2007年12月01日)

ポルトガル語で「1月の川」を意味する「リオデジャネイロ」。
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