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麗しロマン大陸 たいむトラベラー

コスモポリタン都市「リオデジャネイロ」(後編)

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居心地がいいですねえ。

滞在中、何度も取材スタッフといい交わした。たぶんそれは、人々の絶妙な距離の取り方にある。

レストランで生徒たちに混じったとき、武道のイベントで観衆の中で撮影していたとき。どこに行っても言葉が通じないのにあまり困らない。

特に気を使われているわけでもなく、彼らは自分たちの会話を楽しみながら、何気なく料理をとりわけてくれたり、撮影にいい場所を教えてくれたり、緊張した顔をしていると身振り手振りの冗談で笑わせてくれたり。その人懐っこさにずいぶん助けられた。

まちにはさまざまな人種があふれ、一見すると誰が地元の人か分からない

まちを歩くと別の意味で居心地がいい。あらゆる肌や髪の色の人がいて、自分が異邦人であることを忘れてしまうのだ。それは、ニューヨークにいるときと同じ感覚だ。「人と違うことを気にしませんし、自分と違うことを受け入れる気持ちが強い」堤さんがそう評していたことを何度も思い出した。

リオデジャネイロではビーチバレーはシニアが楽しむスポーツだとか

ビーチを訪れるとさらにそんな気分が強くなる。

色とりどりの水着姿の老若男女が白砂のビーチに点在するさまは、遠目に見ると、カラフルなビーズが散らばったよう。ビーチバレーに興じる老人たち、サッカーボールを追い回す子供たち、手をつないで海に入る中年夫婦。ビキニ姿の女性たちについ目を奪われるが、これがみごとに年齢も体形もばらばらで、堂々たる着こなしっぷりはむしろ気持ちがいい。

「スタイルがよくないからビキニは着ない、という気持ちはありませんよ」

カリオカ(リオっ子)はそう言った。

ここ数年、日本、とくに女性のファッション業界で注目されているのはブラジル発のファッション。水着や日常着の大胆な色使いや形が人気を集めているのだが、業界の人によれば、「ブラジルの服は、隠すのではなく、女性らしいところを最大限にアピールするように造られているんですよ。前向きなんですね」という。

自分なりのペースで好きなものを着て好きなように時間を過ごす。彼らのテンポは、リオデジャネイロ発祥のボサノバのリズムが確かにしっくりくるように思えた。

もうひとつ、見てみたいものがあった。収容人数11万5千人という巨大なマラカナンサッカー場である。だが、同行したカリオカはあっさり、

「今日は無理ですよ。試合がありますから、近寄れません」

試合時間が近づくと車道も歩道も車で埋まり、みな適当に車を止めてそこから歩いて行くのだという。だから、近寄れないというのだ。短時間だけスタジアムの前で車を止めてもらうと、開始数時間前だがすでにチケットを求める長い行列ができていた。

ブラジルは2014年のワールドカップに選出された。スタジアム周辺も熱狂の渦に包まれるだろう

試合がはじまったころ、車窓から外を見ると、まちのあちこちに人だかりができている。

「サッカーを見ながらビールを飲むんですよ」

テレビを置いたオープンテラスのバーで、一喜一憂しながら大騒ぎするのだという。

「でも、あんまり大きなけんかになりませんね。ちょっと殴ってすぐ忘れます」

カリオカが言ったことに、堤さんの話を思い出した。

「この国の人々は、最大公約数的なところのとりかたを心得ているように思います。いくら話してもけんかにならず、話の落としどころを知っているんです」

人との間合いの取り方に関して言えば、ブラジル人は有段者の域に達しているのかもしれない。

気の合う仲間と夜通しおしゃべり。これがカリオカのいちばんの楽しみ

その夜は、ブラジル名物・肉の塊を岩塩で焼き上げたシュラスコを食べに出かけた。と、おそろいのサッカーウエアを着たグループが入ってきて、隣のテーブルについた。観戦帰りなのだろう、乾杯で盛り上がっている。

「地元のサポーターかな?」聞くと、

「みんな静かだから、ブラジル人じゃないよ」

カリオカは涼しい顔で即答した。聞けば確かにデンマークからの観戦ツアー。ブラジル人かどうかは顔だけでは判別がつかないのだが、その見分け方をひとつ学んだ夜だった。

(文・写真 山田静)

(更新日:2007年12月21日)

ポルトガル語で「1月の川」を意味する「リオデジャネイロ」。
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