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麗しロマン大陸 たいむトラベラー

豊かな時間が流れる「カラカス」(後編)

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高層ビルというには中途半端な高さの建物が立ち並び、道路は整備されているものの渋滞は激しく、道行くバスは少し古びている。茶色いビルの色合いも手伝って、カラカスの都心部は、「ちょっと昔の未来都市」に紛れ込んだような気持ちにさせられる。40年前のオイルラッシュのころ、一斉に高いビルが建てられ、多くが再建されていないからだという。

そのころを象徴する建物が、カラカスの景勝地・アビラ山の山頂に残っている。リゾートホテルとして建設されたが、経営難で閉鎖されたものだ。

カラカス市街地の遠景。大都市というにはビルが低くまばらで、田舎というには道路も地下鉄も通り洗練された雰囲気。

翌日は、このアビラ山を訪れることにした。

「カラカスの人々の心の支えです」

とウルダネータさんが語るアビラ山は標高2700メートル、ケーブルカーで山頂を目指す。見下ろす山容は緑深く、ところどころに散策ルートも見える。ここでキャンプをするのが夏の楽しみで、地元の女性に言わせると、デートコースとしても人気なのだとか。

「クラブやバーに行かないの?」と聞くと、「外のほうが気持ちいいでしょ」と肩をすくめられた。

山頂では閉鎖されたホテルを訪れてみた。現在、政府はこのホテルを再建しようと整備しているところだという。ほとんど使われなかったという建物は、白く新しく、寂しげだった。

アビラ山に登るケーブルカー。政府の資本で運営されている。なかなかの絶景が楽しめる

ランチは尾根に点在する山小屋風レストランでいただいた。ガタガタの道を四輪駆動で走ること15分ほど、たどり着いたのは緑豊かな斜面に花が咲き乱れる高原リゾート。遠くにはカリブ海も見える。テーブルは6卓、コースメニューのみ。この尾根にあるのは内装と味にこだわったレストランばかりで、どこも週末は予約でいっぱいだという。搾りたてのイチゴジュースは、味と香りが日本のそれとは比べ物にならないほど強く、しかも甘味があとを引かないおいしさだった。

廃虚ホテルとしゃれたレストラン、そして未整備の道。底力がありながら整備しきれていない、そんな印象が残った。

アビラ山のレストランから眺める風景は、スイスの山岳地帯のよう。少女たちが学校から帰ってきた

同じ日にセントロに出かけた。セントロとは「中心街」の意、中南米では繁華街、あるいは旧市街を指す。しばらく散策してみようと思ったのだが、「車の窓を閉めてください」と運転手から注意を受けた。盗難に遭う危険性があるようだ。車窓風景は、古びた街並みに古着屋や古本屋、屋台が連なる趣のある旧市街の風景で、散歩したらさぞ面白そうだ。だが周辺に暮らすのは、決して豊かとは言えない人々で、治安もあまり良くない、と現地の人も言う。

夜、高いビルの屋上からまち並みを眺めた。またたく星空のような夜景がとてもきれいだ。

案内してくれた在住の日本人は言った。

「きれいだなあ、と思うんですが、あれは、貧しい人たちの家の明かりなんです。この国に暮らす限り、こういう現実を胸に刻んでおかないと、と毎日思います」

アビラ山のレストラン、イチゴジュースは鮮烈な印象を残す濃厚な味だった

彼らは山の斜面にへばりつくように暮らしている。日本のようなネオン街がないぶん、斜面に沿ってともされる電灯は、まちをクリスマスツリーのように彩る。この電灯も、電線から勝手に電力を引いているケースが多いというが……。政府は医療や教育など貧困対策に力を入れているが、なかなか追いつくものではない。

そういえば、ショッピングモールを訪れた際、ぎっしり並ぶブランドショップに目を丸くしていると、ウルダネータさんがこんなことを言った。

「たくさんの人がいるでしょう。でも、誰もショッピングバッグを持っていない。買えないんです」

経済の格差は依然厳しく、輸入に頼る食品も流通が滞ると一気に物不足に陥る。「神様の贈り物」・石油のおかげで経済的には有利なのかもしれないが、それをどう活用するかは、やはり人間の技だ。

ショッピングセンターは広々としてモノがあふれ、散策するには楽しい

最終日の朝。まだ空けきらぬ朝の4時、空港に向かう車の中にいた。車の窓から見える街並みには、プラネタリウムのようなきらきらした明かりが広がっていた。

(文・写真 山田静)

(更新日:2008年01月25日)

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