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麗しロマン大陸 たいむトラベラー

世界に開かれた古都「広州」(後編)

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「あー……仕事場であんまり会わないので、分からないですね」。言われてはっとした。

広州で働く中国人に、中国のどらく世代について何気なく聞いたときのことだ。

 
下校時間、小学校の校門前は出迎えにきた父兄でにぎわう。母親と祖父母、3人で迎える姿も
合水鎮希望小学校の黒板には、英語がびっしり書かれていた。授業では英会話を中心に教えるという

日本でいう団塊の世代は、中国では運が悪い世代だと言われる。思春期は66〜76年に起きた文化大革命のさなかに過ごし、大学は80年代に入るまで混乱の傷跡を残していた。社会に出た80年代、中国は民主化へと歩みを進め、学んだ価値観は180度転換。「それくらいの年齢の方々は、国営企業でまだ働いているか、あるいは個人で商売をしている人が多く、仕事では会う機会がないんですよ」。

香港系の企業で働く30代のZさんは言った。

仕事場とは、上の世代から下の世代に向けて流れるようにノウハウが伝えられていく場所。日本ではあたり前のそんな糸が途中でぷつりと切れているのが中国の現実だ。人材育成は今も国家の最優先プロジェクトである。

人ものがたりで取材した「希望工程」は、1989年にスタートして以来、集まった寄付は30億元、これで1万3千あまりの学校が建てられ、300万人の生徒たちの就学を助けたという。

計画出産を呼びかけるスローガンポスターは、古びて判読も難しくなっていた

国の方針に基づき子供を育成しようという考えは、「三好学生」というシステムにも現れる。「徳(思想)・智(学習)・体(健康)、この3つがそろった学生が三好学生として表彰されます」。三好学生にも段階があり、クラスの中で、学年の中で、学校の中で……と、上には上がいて、子供たちは高みを目指し奮闘努力する。というのは、これに選ばれた経歴は個人履歴に残り、就職などにも参考にされるのだとか。

「でも、外資系などではあまり関係ないんじゃないでしょうか」。日系企業で働く20代のOさんは首をかしげる。彼女は79年に始まった「1人っ子政策」のもと生まれ育った世代だ、古いシステムにもドライな考え方を持っている。日本の事情に詳しく、会話の中でさらりと言う。「山田さんは働きマンですね。私は干物女ですよ」。どちらも日本での人気コミックから産まれた言葉で、前者は仕事一筋の女性を、後者は恋愛音痴な女性を表現している。そのほかにも、「合コンは1度だけで十分です」「それは微妙な感じですね」と、イマドキ言葉を的確に会話に入れてくる。

広州郊外の風景。中国の都市部郊外の風景は、場所が違ってもどこか似ている

「若い世代は、残業などはあまりしませんが、経験から学ぶのが上手」。彼らには経験を積ませていくことが大事、と、張さんが言っていたのを思い出した。

希望小学校を訪れる前日、宿を取った陽春は広州から350キロ、合水鎮にほど近いまち。近隣には工場や工業団地が集まり、泊まったホテルはぴかぴかの新築。道中見かけた建物は、ネオンで飾られた門扉からホテルかレストランかと思ったら地区の人民政府だった。

陽春市人民政府。中国はネオンの好みが独特だ
天河地区のマクドナルドは24時間営業。朝から店内は満席に近かった

「以前とはまったく違いますね」。久々に訪れた張さんも目を丸くしていた。開発のスピードに比べて土地や電力、水力が不足気味の広東省では、地理的条件のいい土地には国内外からの投資が集まり、こうして数年で様変わりしてしまうことも往々にしてあるという。

GDPの伸び率14%、年々まちの様相ががらりと変わり、ライフスタイルも変化し、もっと豊かになれるチャンスは手の届くところにいくらでもありそうに見える。こういう社会で暮らすのは面白いだろうと思いつつ、聞いてみたいことがあった。「こういう変化は、怖くないですか?」。質問した相手は30代の広州人。しばし考え込んだのち、「いえ、面白いことですよ。能力のない人はついていけない情況は困ったものだと思います。でも、仕方ないです。……うん、仕方ない」。

それまでテンポよく世間話をしていた彼が、ゆっくり、日本語を選びながら言った。こちらも答える言葉がしばし見つからなかった。

(文・写真 山田静)

(更新日:2008年03月21日)

広州は昔「羊城」と呼ばれていましたが、それはなぜかご存じですか?
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