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この日のビートルズ

6月18甲虫日記 ポール・マッカートニーの誕生日

年をとるにつれ昔の出来事の記憶は薄らいでいく。だけど、あの4人に関する「この日」だけは、忘れてしまいたくはない。20世紀最高のファブ・フォーをこよなく愛する人たちへ。ビートルズの4人にまつわる日付を手がかりに、思いつくまま、気の向くまま、つらつらと記していきます。

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© Express Newspapers / NANA
1967年、アルバム“SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUBBAND”発売を祝うパーティーでのビートルズ

ポール・マッカートニーが健在ぶりを示した。65回目の誕生日を前に2年ぶりのソロアルバム「メモリー・オールモスト・フル」をリリース。ビートルズ解散以降、ベスト盤とライブ盤を除いた作品は通算21作目というから、「2年に1枚」を上回るペースだ。

ここ数年はツアーも意欲的だ。受賞こそ逃しはしたが、2年連続でグラミー賞にもノミネートされた。リンゴにも新作発表の予定があるらしい。すでにジョンとジョージがこの世を去り、半分になってしまったビートルズ。残された2人が活躍するニュースを耳にするだけでもうれしいものだ。

新作のニュースを聞いて、つくづくポールは勤勉な人だと思った。僕が中学生だった30数年前、先妻リンダやデニー・レーンらと組んだバンド「ウイングス」は絶頂期を迎えていた。あれからジョンの射殺、一時的なスランプ、リンダの死など人生の苦難を何度も乗り越え、音楽活動を続けてきた。何か一つのことを達成しても、すぐ次のことに向けて考える性格らしい。映像編アンソロジーでは、そんな仕事熱心なポールにリンゴが脱帽するシーンが出てくる。

ポールが音楽に取りつかれたきっかけを、ジョンの美術学校時代からの友人で音楽紙「マージー・ビート」の創刊者ビル・ハリーは、母の死という悲劇に結びつける。看護婦だった母親メアリは45歳のとき乳がんに冒される。14歳だったポールは母の死を知らされ、「母さんの稼ぎがなかったら、ぼくたちはどうなる」と言った。その言葉の裏側にある深い悲しみが、彼を音楽の世界へ没頭させたに違いないと。

メアリはたびたびビートルズの歌に登場する。「どうやって生計をたてているの、家賃はどうやって払っているの」。「レディ・マドンナ」は働きものだった母親への賛歌だ。「レット・イット・ビー」では、苦しみ悩んでいる暗黒の時に「マザー・メアリ」が姿を現す。グループ内でほかの3人との疎外感に悩んでいた。リンダとの最初に産まれた娘には、メアリと名付けた。

父親ジェイムズの名誉のために一言付け加えるとすれば、妻の死後も飲んだくれることも女と出て行ったりすることもなく、ポールと弟の2人の子どもの面倒をしっかりみたそうだ。弟のマイクは「俺たち兄弟は父親に大きな借りがある」と後に語っている。ポールが音楽を始めたのは、ジャズバンドを結成していた父親の影響でもある。

新作の話題に戻るが、2番目の妻との一連の離婚騒動の渦中ということもあり、「追憶の彼方に」(邦題)というアルバムタイトルもなにやら意味深だ。

40年前の6月1日、ビートルズの傑作アルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」が発売された。その中の1曲「ホエン・アイム・シックスティ・フォー」はポールが16歳のころ原形をつくり、その後、64歳になった父親に捧げるために作り直したとされる曲だ。 「僕が老いぼれてもバレンタインやバースデー・カード、それにワインも贈ってくれるかい」

64歳のバレンタインデーを、再婚した妻と別居して迎えることになろうとは、40年前に歌でも予想できなかっただろう。母の死を経験して以来、どんな困難が身に降りかかろうとも、音楽を癒しの糧にして前を向いてきたはずだ。また、新しいメロディーが生まれて来るに違いない。

お知らせ

写真
©MPL Communications Ltd.
ジャケット写真

『追憶の彼方に 〜 メモリー・オールモスト・フル』

  • ポール・マッカートニー
  • 2007.6. 6発売 Hear Music

コーヒー・チェーン「スターバックス・エンターテイメント」と、「コンコード・ミュージック・グループ」が共同で新レーベル「ヒア・ミュージック」を設立した。ポール・マッカートニーは、その第一弾契約アーティストとなった。

収録曲

  1. ダンス・トゥナイト / Dance Tonight
  2. エヴァー・プレゼント・パスト / Ever Present Past
  3. シー・ユア・サンシャイン / See Your Sunshine
  4. オンリー・ママ・ノウズ / Only Mama Knows
  5. ユー・テル・ミー / You Tell Me
  6. ミスター・ベラミー / Mr Bellamy
  7. グラティチュード / Gratitude
  8. ヴィンテージ・クローズ / Vintage Clothes
  9. ザット・ワズ・ミー / That Was Me
  10. フィート・イン・ザ・クラウズ / Feet in the Clouds
  11. ハウス・オブ・ワックス / House of Wax
  12. ジ・エンド・オブ・ジ・エンド / The End of the End
  13. ノド・ユア・ヘッド / Nod Your Head
  14. ホワイ・ソー・ブルー / Why So Blue

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Profile

上林 格(かみばやし・さとる)

1962年生まれ。この年、ビートルズが「LOVE・ME・DO」で英国デビューした。1986年、朝日新聞社に入社。東京本社社会部、地域報道部、東京総局など勤務。東京版で「ビートルズの目撃者 日本公演から40年」を連載した。

(更新日:2007年06月18日)

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