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この日のビートルズ

7月6甲虫日記 ジョンとポールが出会った日

年をとるにつれ昔の出来事の記憶は薄らいでいく。だけど、あの4人に関する「この日」だけは、忘れてしまいたくはない。20世紀最高のファブ・フォーをこよなく愛する人たちへ。ビートルズの4人にまつわる日付を手がかりに、思いつくまま、気の向くまま、つらつらと記していきます。

50年前のこの日、世界を変える2人の若者が出会った。英国の港町リバプールにあるセント・ピーターズ教区教会。よく晴れた暖かい土曜日の午後、恒例の夏祭りが開かれていた。

友人のアイバン・ボーンに誘われたポール・マッカートニーは、自宅から約2キロ離れた教会に自転車でやってきた。母親を病気で失ってからのポールは音楽にのめり込んでいた。会場に着くなり、野外ステージのバンド演奏をみつけるとすぐに足を運んだ。

チェックのシャツを着て、ブロンドの髪をちょっとカールさせた、なかなかセンスのいい男に目がいった。ドラマーがいないスキッフルバンドをバックにして、デル・バイキングスの「カム・ゴー・ウイズ・ミー」を歌っていた。

「歌詞は間違っていたけど、歌はうまくてかっこよかった」

ステージに立つジョン・レノンを初めて観たポールの感想だった。ジョンは自分がつくったバンド、「クオリーメン」を率いていた。

ジョンはまもなく16歳9カ月になろうとしていた。ポールは15歳になったばかりだ。日本でいえば高校3年生と1年生の関係だから、お互いがものすごく年の差を感じているころだ。

ジョンは近所でも評判の不良少年だった。学校は違ってもポールは彼の存在を知っていた。バスの中では遠くから見ていた。「あんまりジロジロ見ると殴られるぞって思っていた」。どこか人を寄せ付けない雰囲気をジョンに感じていた。

だが、この日、ジョンのステージ姿をみたポールに魔法がかかった。

実は、アイバンはジョンの友人で、クオリーメンの“時々メンバー”でもあった。ポールを教会に誘ったのは、リーダーのジョンに引き合わせてバンドに入れようとしたからだ。

ことはアイバンの思惑以上に進んだ。演奏が終わるとポールはアイバンと一緒に楽屋を訪ねた。夜のステージに備えていたメンバーは、全員が未成年だったがビールを飲んでくつろいでいた。ポール少年も場に合わせて精一杯、いきがって見せた。

夜のステージが終わると、20世紀最高のオーディションが始まった。

ポールはメンバーの前でピアノを弾いた。「ロング・トール・サリー」「トゥティ・フルティ」などリトル・リチャードの曲をやって見せた。茶箱や洗濯板を楽器にしていたスキッフルバンドのメンバーは驚いた。続いて左利きのポールは右用のギターを逆さに持ち、エディ・コクランの「トゥエンティ・フライト・ロック」の歌詞を正確に歌って見せた。これにはジョンもぶっ飛んだ。さらにポールは「トゥエンティ・フライト・ロック」とジーン・ビンセントの「ビー・バップ・ア・ルーラ」の歌詞を紙に書いてジョンに渡した。最後にギターのチューニング方法を教えて、とどめを刺した。

ジョンは、ギターのコードを2つしか弾けなかった。しかも、母親から学んだ、弦が5本しかないバンジョーの弾き方でギターを演奏していた。家に帰り、ポールに教わったコードの押さえ方を覚え直した。

ポールに出会ったときのことを述懐するジョンの言葉には、自分と同等の、あるいはそれを上回る「何か」に出会った時の恐れと喜びが対峙する。

「もしポールを仲間に入れたら、僕は彼をいつも追いかけていなきゃならないかもしれない。でも、ものすごく上手だから仲間に入れる価値はあった。それに、エルヴィスにも似ていた。要するに、僕はあいつに惚れたんだ」

数日後、ポールはクオリーメンのメンバーのピート・ショットンにまちで出くわし、「僕らのバンドに入る気はないか」と誘われた。ジョンは無二の親友ピートにポールのメンバー入りを相談していた。ポールは嬉しくて仕方がなかったというが、その気持ちを押し殺して「考えとくよ」とだけ返事した。今度はアイバンを通じてジョンに「イエス」と伝えた。

記録によれば、その年の10月18日、ポールはリバプール市内であったクオリーメンのギグに初めて参加する。バンド名が「ビートルズ」と変わり、世界制覇に向けてデビューするのは、それから5年後になる。

お知らせ

ジャケット写真

『アンソロジー(1)』

  • 1995.11. 22発売 東芝EMI

収録曲

【ディスク:1】

  1. フリー・アズ・ア・バード
  2. スピーチ:ジョン・レノン
  3. ザットル・ビー・ザ・デイ
  4. イン・スパイト・オブ・オール・ザ・デンジャー
  5. スピーチ:ポール・マッカートニー
  6. ハレルヤ,アイ・ハー・ソー
  7. ユール・ビー・マイン
  8. カイエンヌ
  9. スピーチ:ポール・マッカートニー
  10. マイ・ボニー
  11. エイント・シー・スウィート
  12. クライ・フォー・ア・シャドウ
  13. スピーチ:ジョン・レノン
  14. 同:ブライアン・エプスタイン
  15. サーチン
  16. スリー・クール・キャッツ
  17. ザ・シーク・オブ・アラビ
  18. ライク・ドリーマーズ・ドゥ
  19. ハロー・リトル・ガール
  20. スピーチ:ブライアン・エプスタイン
  21. ベサメ・ムーチョ
  22. ラヴ・ミー・ドゥ
  23. ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ・イット
  24. プリーズ・プリーズ・ミー
  25. ワン・アフター・909(シークエンス)
  26. 同(コンプリート)
  27. レンド・ミー・ユア・コーム
  28. アイル・ゲット・ユー
  29. スピーチ:ジョン・レノン
  30. アイ・ソウ・ハー・スタンディング・ゼア
  31. フロム・ミー・トゥ・ユー
  32. マネー
  33. ユー・リアリー・ゴッタ・ホールド・オン・ミー
  34. ロール・オーバー・ベートーヴェン

【ディスク:2】

  1. シー・ラヴズ・ユー
  2. ティル・ゼア・ワズ・ユー
  3. ツイスト・アンド・シャウト
  4. こいつ(ディス・ボーイ)
  5. 抱きしめたい
  6. スピーチ:マーカム・アンド・ワイズ
  7. ムーンライト・ベイ
  8. キャント・バイ・ミー・ラヴ
  9. オール・マイ・ラヴィング
  10. ユー・キャント・ドゥ・ザット
  11. アンド・アイ・ラヴ・ハー
  12. ア・ハード・デイズ・ナイト
  13. 彼氏になりたい
  14. ロング・トール・サリー
  15. ボーイズ
  16. シャウト
  17. アイル・ビー・バック(テイク2)
  18. 同(テイク3)
  19. ユー・ノウ・ホワット・トゥ・ドゥ
  20. ノー・リプライ(デモ)
  21. ミスター・ムーンライト
  22. リーヴ・マイ・キトゥン・アローン
  23. ノー・リプライ
  24. エイト・デイズ・ア・ウィーク(シークエンス)
  25. 同(コンプリート)
  26. カンサス・シティ/ヘイ・ヘイ・ヘイ・ヘイ

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Profile

上林 格(かみばやし・さとる)

1962年生まれ。この年、ビートルズが「LOVE・ME・DO」で英国デビューした。1986年、朝日新聞社に入社。東京本社社会部、地域報道部、東京総局など勤務。東京版で「ビートルズの目撃者 日本公演から40年」を連載した。

(更新日:2007年07月06日)

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