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人類がまだ月面着陸を夢見ていた1960年代、英国出身の4人の若者が世界を席巻した。ポピュラー音楽史の記録を次々と塗り替えただけではなく、文化、思想、生活スタイル、あらゆる分野に強烈な影響を与えた。語り継がれる20世紀最高のファブ・フォーの「この日」にこだわってみました。

「大御所」といわれる数少ないロック・スター、ボブ・ディラン。ビートルズが彼と初めて会ったのは、1964年8月28日の金曜日だった。場所はニューヨーク。摩天楼マンハッタンのパークアベニューに建つデルモニコ・ホテルだ。

その年2月の初渡米で「全米制覇」を成し遂げたビートルズの人気は、とどまるところを知らなかった。4月に音楽チャートの上位5曲を独占。8月から始まった約1カ月間の全米ツアーはどこも熱狂の嵐だった。その日、フォレスト・ヒルズ・テニス・スタジアムでは、1万6千人の観衆がジェット・エンジンンなみの絶叫を巻き起こした。

両者を引き合わせたのは、アル・アロノヴィッツという米国人の音楽評論家だ。「サタディ・イブニング・ポスト紙」にビートルズに好意的な特集記事を載せたばかりの彼は、ビートルズのマネジャー、ブライアン・エプスタインから厚い信頼を得ていた。

電話でジョンと直接話したアロノヴィッツによると、「ボブ・ディランに会いたいか」と聞かれたジョンは「もちろん」と即答したという。

「ボブ・ディランは僕らのヒーローだった。ジョンがボブのレコードを聴かせてくれた。すごい曲をつくる、粋な若者だった」。リンゴがアンソロジーで回想したことは、初渡米直前にビートルズが公演のため滞在していたパリでの出来事だと推測できる。

彼らはホテルで、地元ラジオ局のDJから借りたディランの2枚目のアルバム「FREEWHEELIN' Bob Dylan」を夢中で聴いていたという。「風に吹かれて」「激しい雨が降る」など全曲オリジナルで構成された名盤だ。

ジョンは流行に左右されやすい自分の性格を「カメレオン」と例えたが、この頃の彼は「ディラン時代」なのだという。パリ滞在中のジョンの写真には、ファースト・アルバムのジャケットでディランがかぶっているようなつば付きの帽子をしたカットが残っている。ジョンの心酔ぶりがうかがえる。

ポールは「FREEWHEELIN'〜」以前からディランの存在を知っていたが、それほど胸に響く印象はなかったようだ。「ディランの回りくどい言い回しや詩の世界がジョンの琴線に触れたんだ。ジョンは『これこそ僕の世界だ』と感じたんだろう」

ジョンによれば、「I'm A Loser」や「You've Got To Hide Your Love Away」あたりから、「僕は自分自身の感情を曲に表現するようになっていた」という。それまでは自著「In His Own Write」(64年3月出版)で表現していた「自分の世界」を、自作曲のなかでも展開するようになった。そのことをジョンに気づかせたのがディランだ。

「話し合いとかしたわけじゃなく、彼の作品を聴くうちに気づいたんだ」

ディランがビートルズを知ったのは、全米初のナンバーワン・ソング「I Want To Hold Your Hand(抱きしめたい)」がきっかけになる。63年のクリスマスの翌日に発売され、最初の3日間で25万枚を売り上げると1月10日には計100万枚を突破。1月25日、ついに全米ヒット・チャートの1位に立った。

この曲をディランは、コロラドの山岳地帯をドライブしているときに聴いた。放送していたラジオ局のヒット・チャートは、上位10曲のうち8曲がビートルズの曲だったという。

「私には彼らが音楽の未来を切り開くように思えた」と賛辞すると同時に「いったい何が起きているんだ」と驚いている。

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