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この日のビートルズ

10月24日甲虫日記 死人が歩く、死人が答える

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人類がまだ月面着陸を夢見ていた1960年代、英国出身の4人の若者が世界を席巻した。ポピュラー音楽史の記録を次々と塗り替えただけ ではなく、文化、思想、生活スタイル、あらゆる分野に強烈な影響を与えた。語り継がれる20世紀最高のファブ・フォーの「この日」にこだわってみました。

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「ポールが死んだ」との噂が米国で広まる直前のポール(右)とリンダ=1969年8月、Photo by Cummings Archives/Redferns

アルバム「ABBEY ROAD」が発売された1969年秋、ポール・マッカートニーが死んだという噂が米国を中心にものすごい勢いで広まっていた。

「僕が死んだって? なんで誰も僕に教えてくれないんだ」。ポールは新聞のインタビューに短く答えただけで、妻リンダと生まれたばかりのメアリーら家族を連れてスコットランドの北西部・キンタイヤ岬にある農場に引きこもっていた。

69年10月24日、一向におさまる様子がない噂の真相を確かめるべく、BBCの記者クリス・ドレイクがポールの農場に出かけた。

ポールはばかげた噂をやめさせる良い機会と考え、ドレイクの独占インタビューを受け、自分は確かに生きていると断言した。その内容はラジオで3回放送され、少なくとも英国では噂はデマだと信じられた。

まことしやかな噂の出所は、正確にはわからない。

同年9月17日、米国アイオワ州のドレイク大学学生新聞が、「ポールは66年11月9日、スコットランドにおける交通事故で死亡していて、うり二つの人物が身代わりを演じている」という噂について論じた。22日には、イリノイ州のイリノイ大学学生新聞が、「Strawberry Fields Forever」のフェイド・アウト部分に「私はポールを埋葬した」と聞こえる言葉がある、ことなどを根拠に「死亡説」をほのめかした。

この噂を一気に広めたのが、ミシガン州デトロイトにあるアングラ系ラジオ放送局WKNRだ。

10月12日、イースタンミシガン大学の学生だという『トム』は、同局のリスナー参加番組に電話をかけ、「ポールが死んだ話をしたい。レコードに手がかりがある」と主張し、DJにビートルズの「Revolution 9」を逆回転で聴くように強く迫った。

おもしろがったDJは、この曲の「ナンバー・ナイン……ナンバー・ナイン」という声が繰り返される部分のテープを逆回転させた。単調な声が聞こえた。リスナーは「私をハイにしてくれ、死者よ……私をハイにしてくれ、死者よ」と聞こえると主張した。

この放送を聞いていたミシガン大学のある学生が、噂の質をさらに高めるような突飛な記事を学生新聞に掲載した。その学生は「ウィリアム・キャンベル」という名のエディンバラ出身の孤児を「ポールの替え玉」に仕立てた。「キャンベル」はポールになりすますため、ほかのビートルズのメンバーからひそかに訓練を受けたというのだ。

後に別のラジオ局が実在するキャンベルを探し出す。キャンベルは一度「ポールそっくりさん」コンテストで優勝した経歴を持っていたのだ。

アルバムを片っ端から聴き返し、ジャケットを穴の開くほど眺める日々を過ごしていたファンは、ビートルズがアルバムにちょっとしたジョークや隠されたメッセージを入れて味付けするのが好きなことを知っていた。コンサート活動をやめた66年以降のレコードは様々な速度で逆回転させられ、アルバム・ジャケットや宣伝用写真は他に証拠がないかと吟味され、「ポールは死んだのか」会まで作られた。

しかし、結果的にはどれも深読みされすぎていて、ビートルズがまるで意図しなかった「解釈」へと発展したものばかりだ。

次々と現れるポール死亡の「深読み」… 次のページへ

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