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人類がまだ月面着陸を夢見ていた1960年代、英国出身の4人の若者が世界を席巻した。ポピュラー音楽史の記録を次々と塗り替えただけではなく、文化、思想、生活スタイル、あらゆる分野に強烈な影響を与えた。語り継がれる20世紀最高のファブ・フォーの「この日」にこだわってみました。
テレビとラジオには「放送禁止」処分という自主規制がある。作品の内容が反社会的とか差別的な歌詞が使われているとかの理由で、まったく曲を放送しなかったり歌詞の一部を消したりして流すことだ。なかにはメディア側の処分を事前に察知し、制作・販売側がレコードやCDの発売を中止したこともある。
ビートルズも例外ではない。1967年11月20日、英国の国営放送局(BBC)は、発売直前のシングル「Hello, Goodbye」のB面「I Am The Walrus」をテレビとラジオの両方で放送禁止にすることを決めた。
「You let your knickers down」(おまえは簡単に下着を脱いじゃう)という歌詞が問題だと判断したらしい。「Yellow matter custard Dripping from a dead dog's eye」(黄色いカスタードのような膿 死んだ犬の眼からしたたり落ちる)という歌詞も十分にグロテスクではあるが……。
BBCは、論争を避けるように「放送禁止」という言葉は表向き控えていた。処分決定後の25日、2枚組EP盤「MAGICAL MYSTERY TOUR」の全曲をラジオ1で放送した。この時は「I Am The Walrus」を放送ししている。
ジョンはこの曲について、「100年先でも楽しめるものが含まれている」と気に入っていた。一方で、歌詞の内容については、「何の関連性も持たない極端にかけ離れたイメージを一つにすること」でマスコミやリスナーを混乱させようとした、と白状している。そんなハチャメチャな曲だけに、BBCが歌詞のどこかに違法な行為などを暗示させるものがあるに違いない、と疑ったとしても不思議じゃない。
BBCが神経をとがらせていた十分な理由があった。同年6月発表のアルバム「SGT.PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」のいくつかの曲が、麻薬がらみで物議を醸したからだ。
アルバムのハイライトを飾る「A Day In The Life」は、BBCが初めて放送禁止にしたビートルズの曲となった。麻薬で人に快楽を起こさせるという意味を表す「turn on」という言葉が登場。ポールがつくった部分に「had a smoke」(一服やった)という表現があったことや、オーケストラを使った高揚感あるサウンドが幻覚症状を連想させる、など総合的に判断したらしい。
「Lucy In The Sky With Diamonds」がLSDによるトリップ体験の描写だとする説は、頭文字をとると「LSD」になると指摘されて一段と信憑(しんぴょう)性を帯びた。当初は放送禁止にした放送局もあった。
ジョンの反論は広く知られている。息子ジュリアンが幼稚園から持ち帰った「ダイヤモンドをもってお空に浮かんでいるルーシーを描いた」とする絵からインスピレーションをうけ、不思議の国のアリス風にイメージを膨らませて「意識的に詞を書いた」と死の直前までLSD説を否定した。実際、その絵も公開された。絵のモデルになった英国人女性ルーシー・ボデン(旧姓オドネル)さんは病気のため、今年9月になくなった。
「Fixing A Hole」は、「hole」が注射器を刺したときに腕にできる穴のことだと解釈され、「ヘロイン注射のことでは」と疑われた。ポールは「紛れもなく家の修繕と雨漏りの修理のことを歌った」と否定した。
リンゴが歌う「With A Little Help From My Friends」の「help」は麻薬の助けを意味しているとされた。70年、米国のスピロ・アグニュー副大統領が「ドラッグ・パワーのトリュビュート・ソングだという報告を受けた」と発言したことで再び注目を浴びた。泥沼化したベトナム戦争を抱えたニクソン政権は、ヨーコ・オノとともに米国を拠点に反戦活動を展開しはじめたジョンを危険人物として目を付けていた。
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