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作品名:「再会の街で」

 
©2007Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

街で偶然、学生時代の友人を見かけたら……。懐かしさのあまり声をかける時もあれば、なんとなく気がつかないフリをしてしまう時もある。それはちょっとした過去との遭遇であり、「あの頃」との出会いで、「今」がより鮮明に自分の中へ落ちてくるからだ。懐かしさの後に襲ってくる「今」という現実感に落ち込むこともあれば、奮起することもある。そういう意味で、時を経た友人との再会は、日常にちょっとしたハプニングをもたらす。

アラン(ドン・チードル)は歯科医として成功し、妻のジャニーン (ジェイダ・ピンケット=スミス) と二人の娘にも恵まれていたが、何か人生に息苦しさを感じていた。毎日、同じことの繰り返し。そんな時、大学時代のルームメイトだったチャーリー (アダム・サンドラー) と再会する。チャーリーは5年前の9月11日にたった一日で愛する家族をすべて失った悲しみのため、仕事も捨て、人生から逃避し、まるで学生時代に逆行したような生活を送っていた。時を止めてしまい、「今」がないチャーリー。アランはチャーリーの力になりたいと思うと同時に、彼も自分が抱えている「今」の問題に気づいていく。

昨年、映画界では「ワールド・トレード・センター」と「ユナイテッド93」など、「あの時」と対峙(たいじ)し、整理する動きが一気に出てきた。一体、あの時、なにが起こったのか。その事実を、実態を、すさまじさを、そしてやるせなさを描いたため、どうしても政治色の濃いものとなった。しかし、この作品は、その次の段階へと歩を進めている。9.11そのものを描くのではなく、その事件を入り口に、もっとプライベートな市民の心へ、身近な問題へと落とし込んだのだ。

二度と会えない苦しみ。もう一度会いたい切なさ。そしてやり場のない喪失感。それらと向き合う方法……。監督・脚本のマイク・バインダーは、この普遍的なテーマを優しく描いている。9.11という現代的な背景はもちろん、音楽はすべてチャーリーのiPodに録音されている曲という設定など、「今」という時代を感じさせる一方、過去に逃避するチャーリーが聞く音楽は、メッセージ性の強い70年代のものだけ。懐かしさと今っぽさを絶妙にブレンドし、物語の奥行きを演出している。しかも少し髪を長くしたボサボサ頭のサンドラーは、どことなくボブ・ディランに似ている。さらに空撮などの派手に感動をあおるような演出は一切なし。あくまでもカメラは街を歩く視線で、自然体のニューヨークをとらえながら、冗談めいた軽快な会話や少年のように無邪気にはしゃぐ姿で、心の交流を追っていく。

この等身大の演出もさることながら、シリアスなテーマを最後まで重くなりすぎず、素直に楽しめるのは、主演二人の名コンビぶりによるところが大きい。「ホテル・ルワンダ」などで演技派として定評の高いドン・チードルは、まじめでちょっと情けないアランを好演。そして少年のような自分の殻に閉じこもった大人のチャーリー……。サンドラーは、この難役を受ける覚悟が決まるまで1カ月かかったという。だが、それだけ気合を感じる。「フィッシャー・キング」で見せたロビン・ウィリアムズの無邪気な明るさから、時折こぼれる圧倒的な悲しみ、「レインマン」でダスティン・ホフマンが演じた自分の殻に閉じこもった人間の悲しさといとおしさ。サンドラーは、それをミックスしたような演技でみせる。

男の友情、70年代の名曲、そしてニューヨーク。疲れた大人のちょっとした休み時間となるような、そんな温かい作品だ。

  

(Written by 柏木しょうこ)

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